sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説、アニメ、ドラマ等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。不定期更新。

文乃ゆき 『ひだまりが聴こえる』

ひだまりが聴こえる (Canna Comics)


初めて読む作家さんの本でした。

表紙買いです。本当に表紙のイラスト、綺麗ですよね。優しい木漏れ日が降り注ぐ緑豊かな大学の構内の雰囲気がとてもよく伝わってきます。サムネ画像よりも原本の絵はもっと緑色系統の色味が強く、繊細で美しくて凄く好きな絵です。

内向的な難聴の大学生・航平と明朗活発な同級生・太一のお話でした。太一がノートテイク(聴覚障害の学生の為に講義内容を筆記でまとめ対象生徒に通訳すること)をする代わりに、航平が持ってきたお弁当をあげる、というギブアンドテイクをきっかけに、二人は仲良くなっていきます。

どういう家庭環境で育ってどういう人間になったのかなど、回想シーンを多用して丁寧に描かれており、二人の人物像に説得力がありました。

ただ恋愛色は薄めですのでBLとして読むと物足りない気がしないでもない……。描き下ろしがあってやっと太一の気持ちが掴めるという感じですが、かといって描き下ろしのラストでもはっきり恋人同士になりましたという描写はなく、友達以上恋人未満な状態で終わっていました。

それにしても、航平のママの若さに驚きです。とても大学生の子供がいるとは思えないw
あと、太一の高校の先生が回想シーンでしか登場せず名前もない脇キャラですが、将来のために進学を強く勧めてくれて良い人でしたね。


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真瀬もと 『背中合わせのくちづけ』 2~3巻

背中合わせのくちづけ(2) (ディアプラス文庫)

背中合わせのくちづけ(2) (ディアプラス文庫)

背中合わせのくちづけ (3) (ディアプラス文庫)

背中合わせのくちづけ (3) (ディアプラス文庫)

  • 攻め:ウィリアム・ライト(36)
  • 受け:オーブリー・パトリック


舞台は1巻に引き続き、禁酒法時代のアメリカ、ギャングスターの闊歩するシカゴ。

『背中合わせのくちづけ』は全3巻の作品ですが、この2巻と3巻は、1巻とは違ったカップルが主人公をつとめます。それは、1巻で脇役だった元心臓外科医の司法省の捜査官ウィリアムと、神父のオーブリー。
1巻も良かったけれど私は2~3巻の方が好きです。とても面白かったですよ。

狂おしい憧れで彩られた翅からこぼれる鱗粉は、毒のように心を惑わせる―。アメリカ禁酒法時代、妻をギャングの抗争の巻き添えで喪ったウィリアムは、司法省特別捜査官となってシカゴへとやってきた。復讐の手段を選ばぬ彼は、計画のために教区の神父を犯し、その姿を写真に撮るが…。

かなりへヴィで容赦ない泥沼化

この作品はギャングの抗争に絡んで恋愛ストーリーが繰り広げられますが、話が進むにつれてどんどん事態が悪化していきます。「え、ちょ、どうなっちゃうのこれ」とかなりハラハラさせられました。

特に、オーブリーを襲う数々の危機が凄いんです。身体的にも精神的にも辛いことが重なって実に不憫な状態に……。メンタル弱い人だったら自殺したくなるほどなのではないでしょうか。
もちろんギャングたちのせいもあるんだけれど、受けを奈落の底に引きずり込んだ主犯は、ぶっちゃけ攻めなんじゃないかと思います。ウィリアムと出会うことが無かったら、オーブリーはずっと地域の人に慕われ穏やかな日々を神父として過ごしていたことでしょう。

露悪的な執着攻め

ここまで酷い仕打ちを受けにする攻めは久々に見た気がしますよ。ある意味、ウィリアムって凄い。オーブリーに性的暴行をしてその際の写真をもとに秘密を洩らせと脅迫するわ、数カ月にわたって監禁するわ、何度も強姦するわ、皮肉と憎まれ口を叩きつけてオーブリーの心を傷つけるわ、オーブリーから信仰を奪い去ろうとするわ、自分のものにならないなら殺すつもりでオーブリーの頭に銃口を突き付けるわ、悪役か!とツッコミを入れたくなるほど過激な所業を繰り返します。実際、むしろ本物の悪役のギャングキャラクターでさえもオーブリーを殺そうとするウィリアムにドン引きするレベルでした。

もちろん、ウィリアムが脅迫したのは殺された亡妻の復讐を遂げるためという理由もありますし、オーブリーも最終的にはウィリアムとともに生きていくことを決意するわけですが、それにしたってウィリアムの行為は過激ですよ。

しかもこの人、素直じゃなくて露悪的なひねくれ者なんですよね。なかなかオーブリーへの恋心を自分で認めません。しかし明らかに執着を示しており、とうとう2巻の後半でオーブリーが直截に尋ねることになります。

「ウィリアム、あなたは私を好きなんですか?」

私は、ああやっと核心に迫る問いがきた! これでウィリアムはオーブリーに気持ちを告げられるとこの台詞を読んで喜んだのですが、ウィリアムときたら

「あなたを愛している。だから抱いた」
激しい声で――、憎しみをたたきつけるように答えると、オーブリーはびくりと震えた。
「だが愛に幻想を抱くのはよした方がいい。最初に抱いたときの具合がよかったから、そのからだと快楽に執着した。そういう愚劣な愛もある」

「俺を美化して、自分の身に起きたことの悲惨さをごまかすつもりなら、諦めた方がいい。現実を直視するんだな。」

肉の快楽に因る愛なのだ、と主張するのです。いやいや、ウィリアムあなたどう見てもオーブリーに恋着してるじゃないですか、愛しちゃってるじゃないの。核心に迫る問いをぶつけられても素直になれないあたりが露悪的なウィリアムらしいけれど、「的確にふたりの関係のねじれに斬り込む問い」だとわかっているのならここで素直にならずいつ素直になるのだと!ええい、もどかしい!

で、さすがにこの後2巻終盤でウィリアムはオーブリーへの愛を自覚します。凄いのが、そこから全てを捨ててオーブリーを自分だけのものにしようと決意し、それを実行すること。潔いのです。あれだけ力を注いでいた亡妻のための復讐でさえ放棄するのですから凄い。なりふり構わず、まるで飢餓の人が食べ物を求めるが如く、ただひたすらにオーブリーを求めるウィリアム。執着攻めっぷりを思う存分堪能できました。

オーブリーの優しさと強さ

独身であるべきカトリックの聖職者は、もちろん同性相手だろうが異性相手だろうが恋愛や性愛はご法度です。そんな神父がメインキャラで最初はどうなることやらと思っていたのですが、ヘタに破天荒な神父や悪徳神父という人物造形に逃げるのではなく、清廉かつ温厚な自他共に認める敬虔なクリスチャンとしてオーブリーが描かれていたのがこの作品を面白くさせていたなぁと感じました。

オーブリーは聖職者らしく慈愛に溢れる優しい人です。殺人とも隣り合わせな日常を送るギャングスターのビリーに対しても、本気で考えて言葉をかけています。

「あなたは殺すことを罪だと知っているはずです。考えてみてください。他者を傷つけずに生きる道を選ぶことだって、あなたにはできるんです」
「無理だね。俺はあんたとは違う世界で生きてる。殺らなきゃ、こっちが殺られる。俺に死ねというのか?」
短い沈黙。おざなりの説教ではなく、ビリーのために何か懸命に考えているらしい。馬鹿馬鹿しいが、憎めなかった。
「では、殺し合いのない生活について、日に一度でいいから、頭に思い描いてみてください」
「なんだって?」
頓狂な声が出た。
あくまでも、まじめな声が返ってくる。
「思い描いて、そうした暮らしの幸福を考えてみてください。あなた自身がそうした幸福を得られること。それだけではなく、あなたの力でそうした幸福を多くのひとに与えられるということを」

この場面はギャングの視点によって描かれていますが、オーブリーの人柄がよく出ているシーンだなぁと思いました。これ、現役ギャングを前にしてなかなか言える台詞ではないですよね。

酷いことをしたウィリアムに対しても、オーブリーは聖職者としての惜しみない博愛精神を向けています。ただ、ウィリアムの場合は博愛なんかを欲しいわけではありませんから、すれ違うのですが。しかもウィリアムときたら、受けの慈愛深さに惚れていくので、受けが人間愛としての優しさを見せれば見せるほど、受けに嵌っていくというすれ違いのループが出来上がっていくのです。オーブリーがここまで優しい人でなければウィリアムもこれほど執着したりはしなかったでしょう。

また、オーブリーは優しいだけではなく芯の強さや勇気も秘めている人物です。攻めの脅迫に屈せず告解の秘密を最後まで守り抜いていますし、誰もが報復を恐れて口をつぐんだ殺人事件においても犯人のギャングを告発していますし、爆弾の仕掛けられた建物に入って行って人を助けようともします。ウィリアムに対しても批判すべきことはしっかり批判しており、そういったオーブリーの側面にもますますウィリアムは嵌まり込んでしまうのでした。

宗教と同性愛

さてこの作品、受けが神父ということで、BL小説では珍しく宗教と同性愛についてスタンスを明確にして書かれています。まさかBL小説でここまで踏み込んで書いてある箇所が存在するとは思いませんでしたよ。驚きました。

例えば、カトリックについて「中絶はもちろん避妊も禁じている。同性愛についてはどうでしたか?」とウィリアムが意地悪そうに尋ねた時、オーブリーは真摯にこう答えています。

「教会は禁じています。例えばレビ記は、同性愛者を死刑にしなさいと記しています。聖書が記された当時のイスラエルでは、子孫の繁栄こそが大切だったから、それ以外の性行為など認めがたかった。当時の人々の生活を支えるために、そうした規則は必要とされたのでしょう。でも今はちがいます。聖書で禁じられていたとしても、現在では当たり前のように行われていることが他にもあることを忘れてはいけません」
「つまり、同性愛を認めると?」
 若い神父は、ウィリアムの視線をしっかりと受け止めて答えた。
「誰かを愛して、大切に思うのを否定することなんかできないと思います。そうした想いには、善き力がある。けれど、司祭の誓いは、またべつの問題です。そして、あなたのしたことは同性間、異性間を問わず、恥ずべきことです」
 ウィリアムは眉をあげた。説教されるとは予想外だった。その上、なかなか革新的な思想の持ち主だ。強さも秘めている。所属する組織や社会では認められていない理想を語る勇気も。

宗教が絡むだけにデリケートな話題だけれど、現実にもなされている様々な議論を踏まえた上で書いているんだろうなと思わされる記述です。ただ、このオーブリーの「革新的な思想」は、作品の舞台となっている約90年前の禁酒法時代のアメリカにおいてはもちろん、現代においてさえも神父の見解としては相当革新的な部類に入る気がしますね。

3巻には本編のその後を描いた短編『エイプリル』が収録されていますが、スコットランドに二人が移住して初めて住んだ場所から近い教会では、オーブリーが同性愛者であることを理由に聖体拝領を拒まれたという描写がありました。1920年代当時は同性愛には理解のないそんな神父が大半だったことでしょう。一般信徒に戻った後も篤い信仰を持っているオーブリーにとっては本当に辛い出来事だっただろうなぁ。

そんなオーブリーのため、ウィリアムは同性愛に先進的な考え方をする神父(といってもオーブリーほどではなく、当時としては先進的という意味です。同性愛を病気とみなし同情的に対応する神父でした)のいる教会を探し、事前に二人の関係を伝えた上でオーブリーへの聖体拝領を拒まないという約束を取り付けてからそのグラスゴー郊外の教区に転居します。ウィリアム、偉いぞ! 彼本人は信仰を持っていなくても、オーブリーにとって重要なものである信仰生活を守ろうとしているんですよね。ウィリアムのこの行動は、オーブリーへの愛情が見えてなんだかほっこりしました。

好きなシーン

「あなたを愛していると気づいたのも四月でした」とオーブリーが語るのを聞いて、ウィリアムが思わず赤面する場面が好きです。そんなウィリアムをオーブリーがからかうのです。

意表を突かれ、ポーカーフェイスをつくり損ねた。カッと頬が熱くなる。
「顔が赤いですよ、ウィリアム」
「からかっているのか?」
「はい」
こんなことで素直に返事をされてはどうしたらよいのかわからない。軽く睨みつけると、微笑みが返ってくる。

いちゃいちゃらぶらぶですね…! ウィリアムがオーブリーを茶化したり毒舌っぽい冗談を言ったりする場面はよくありますが、オーブリーがウィリアムをからかう場面はここが唯一なのではないでしょうか。こんな愛情たっぷりに優しくやりとりしてる二人に萌えます。

イラストと装丁も良い

麻々原絵里依さんのイラストはキャラの容姿がそれぞれとてもぴったりでした。2巻の白い服を着て説教台に立っているオーブリーのカラー絵も美しかったなー。ちなみに装丁も、小豆色がかった落ち着いた赤と紺青というシックな色合いで作品の雰囲気に合っていたと思います。

その他

  • 『背中合わせのくちづけ』1巻はそれほどではありませんでしたが、2~3巻は登場人物の台詞に少し前の翻訳小説を思わせる言い回しが多くなります。それが作中の雰囲気によくはまっているんですよ。現代日本人が言ったらあまりに芝居がかっているスカした言葉になってしまうでしょうが、この場所この時代設定ならしっくりきます。
  • ウィリアムがオーブリーの瞳を見つめて色々な感情をそこから読み取る描写がかなり多かったのがちょっと気になりました。目は口ほどにものを言いという諺もありますし、雄弁な瞳のキャラって萌えポイントではあるんですけどね。少し多すぎた気がしないでもない。
  • 「ダイスはとうの昔にふられた」という一文がありまして「賽は投げられた」という慣用句のバリエーションとして書いたのでしょうが、こういう表現は珍しいなぁと印象に残りました。
  • 「窓の向こうに降る雪を眺めながら、オーブリーは讃美歌を口ずさんだ」という一文が第3巻にあったんですが、この表現はちょっとどうかなと引っ掛かりました。「讃美歌」ってプロテスタント用語ですよね。カトリックでは「聖歌」と呼び、「讃美歌」という言い方はしないはず。教会のミサの最中にではなく、自宅でオーブリーが個人的に歌ったものだから絶対に「讃美歌」ではなかったとは言い切れないけど、カトリックで司祭に叙任までされたキャラクターが歌ったものだからどう考えても「聖歌」という表記の方が適切なんじゃ……。これは新書館の校閲のミスだと思うなぁ。

まとめ

2~3巻、ハラハラドキドキしながら読みました。とても面白かったです。真瀬さんのBL作品の中では、このウィリアムとオーブリーのカップルが私は一番好きですね。並はずれた執着攻めを読みたい方には特にお勧めです。攻めの、受けへの愛と執着は凄まじいの一言です。


真生るいす 『日報群雲浪漫』

日報群雲浪漫 (ディアプラス・コミックス)

怪盗ものって小説・漫画・アニメを問わず人気で数多くの作品が世に出ていますよね。
もちろん私も大好きです。モーリス・ルブラン『怪盗紳士ルパン』、アニメ『キャッツ・アイ』、アニメ『ルパン3世』、立川恵怪盗セイント・テール』、杉崎ゆきるD・N・ANGEL』、種村有菜神風怪盗ジャンヌ』、青池保子エロイカより愛をこめて』、飯塚友佳子『怪盗Jを探せ!』、氷栗優『ゴージャス・カラット』、そしてBLでは本仁戻の『探偵青猫』、どれもワクワクしながら読んだり視聴したりしたものです。


というわけで、世間を賑わす怪盗を青年巡査が追いかける、というあらすじに惹かれてこの本を買ってみました。

本作の主要人物は、鮮やかな手口で盗みを働く正体不明の怪盗・蜘蛛、彼に振り回される実直な巡査の日吉、そして日吉の友人で伊達男の新聞記者・三井の3人です。蜘蛛からも三井からも迫られてしまう日吉の官能と苦悩の日々を描いています。


で、さっそくネタバレですが、上記の概要を読んだだけで大抵の人は蜘蛛の正体がわかりますよね?w ええ、そうです。あなたの予想は間違っていません。

キャッツ・アイ』しかり、『怪盗セイント・テール』しかり、『神風怪盗ジャンヌ』しかり、怪盗とは逮捕しようとする者のすぐ傍で昼の顔を持っているものなのです。バレたときに二人の関係はどうなのか!?というスリルを読者は楽しめますし、警察関係者が怪盗の正体に気付かないのは怪盗もの作品のお約束ですよね。

ただ、それにしても日吉は鈍いと思いますが。いくら暗がりだとしてもさすがにそれだけ接近してたら気付くでしょうよ!とツッコミたくなってしまう場面もありましたw 声とか体型とかその人の気配とか、近しい人ならなんとなく暗い所でもわかるもんだと思いますけどね。警官なのに日吉は鈍いにも程があると思うぞ。おかげで蜘蛛の正体がばれるかも!?という怪盗もの作品のお楽しみであるハラハラ感があんまりなかったような……。

また、窃盗シーンの描写の迫力や躍動感はもっとあっても良かった気がしますね。もちろんBL漫画ですから恋愛が主で構いませんが、それにしても怪盗と捕縛側が知恵比べをして手に汗握る展開の中で鮮やかな手並みで獲物を盗み出す怪盗・蜘蛛の姿を見たかったです。


ただ、BL萌えという点では見どころは多いですよ。まず、堅物な日吉に想いを寄せる軟派男・三井の純愛っぷりが可愛いかったです。この本、続きはあるんでしょうか? 日吉と三井の心が通い合ってだんだん面白くなってきたぞと言うところでこの巻は終わっているので、続きが気になります。

また、この『日報群雲浪漫』、何が良いって表紙のエロさです(笑) いやー、本当に綺麗だし色っぽいし、凄く良い絵ですよね。衣装は制服制帽で禁欲的なのに肌蹴てるわ拘束されてるわ、淫靡ですよ。なんか、ぐっときます。

本文の方も、日吉の腕を後ろ手に拘束してその下肢を蜘蛛が弄ぶ場面は萌えました。ホットな場面は良かったです。

戦前を思わせるレトロな時代背景も好みでした。浴衣姿とか、サーベルを腰に差した巡査の制服制帽姿とかも恰好良かったです。あと、個人的に路面電車の中で受けと攻めがばったり会うシーンも好きでした。

この作品、舞台はどこなんでしょうね? 港町で、外国人商人がいて、「尾上町」という地名が会話に出てきて、それなりに裕福な人たちもいて、路面電車が走っている街。やはり横浜でしょうか?


ところで、真生るいすさんといえば相撲業界を舞台にしたBL漫画『満員御礼』の作者さんでもあります。『満員御礼』上巻が面白かったので下巻の発売を私はずっと待っているんですが、なかなか発売のニュースを聞かず寂しいです。そちらの方も早く出てくれるといいな~。


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アヴァ・マーチ 『貴族の恋は禁断の香り』

翻訳:美島幸

貴族の恋は禁断の香り (プリズムロマンス)

貴族の恋は禁断の香り (プリズムロマンス)

 1822年4月、イングランド、ロンドン。オリヴァー・マースデンとヴィンセント・プレスコットはともに侯爵家の次男で同じ寄宿学校に通ったこともある親友同士。オリヴァーはヴィンセントへの恋を押し殺してきましたが、ヘテロだと思っていたヴィンセントが密かに男娼を買っていることを知り、一晩だけ男娼に成り代わってヴィンセントに抱かれようとします。そこで初めてヴィンセントのSM嗜好を知り……、というお話でした。

 主人公のオリヴァーは昔から劣等生で実家も借金まみれ、なのに特に仕事もしておらず(必要な時は賭博でお金を用立てる)、社交家でもなく貴族らしい華やかさもなくて、一見ひたすら地味で受動的な性格のキャラのように思えます。ところが、何気に凄い行動力の持ち主でした。

 娼館の女主人に直談判の上男娼として店に潜り込むって、なかなか出ない発想ですよね!ヴィンセントにも自ら一夜を共にした男娼が自分だったと明かしますがその時も声真似して演出交じりの劇的なバラし方をしているし、同性愛に対して煮え切らない態度を示しているヴィンセントを批難して尻を叩いているし、二人の仲を進展させるきっかけを作るのはたいていオリヴァーの方からでしたので、この人結構思い切りの良いタイプだと思います。そういう意外なところは良かったです。

 あと、最後の方にあったリバ。まさかこんな展開があるとは。欧米のスラッシュやM/Mロマンス小説ではリバが普通にあると聞きましたが、本当だったんだなーと何やら読んでいて感慨深くなりました。

 実はこのリバ、本書で一番萌えた展開でした。中でも特にオリヴァーがヴィンセントの服を脱がせているシーンが可愛くて良かったです。

そのまま指先をヴィンセントの脇腹へと動かしていく。
ヴィンセントの体がぴくぴくと動いた。
笑いをこらえているのだろうか?
ヴィンセントがくすぐったがりだとは思ってもみなかった。
 (略)
「くすぐったがりなんだ」オリヴァーはその小さな事実を大切な宝物と思って心にしまいこんだ。愛する男性のこんな親密な部分を知る。なんて素敵なことだろう。

オリヴァー、嬉しそうですね。「宝物」だなんて可愛いです。


 ちなみに難点を言うなら、いくら部屋が暗くて相手が髭面だろうと長年の旧友なら気付くのでは?とか、オリヴァーが男娼の正体は自分であるとバラすつもりになったきっかけがいまいちよくわからないとか、キスという行為にあまりにも重要な意味付けをしているのがピンとこないとか、ちょっと腑に落ちない部分はありました。

 また、翻訳はそこまで違和感は感じませんでしたが、邦題は陳腐かなぁと思いますね。あと、SMシーンの会話文の文体にはちょっと翻訳っぽさが強く出ていた気がします。「お願いです」という言葉を受けがたくさん発していて、これはたぶん原文では「Please」なのではと思いますが、日本語としてちょっと不自然な感じがしました。日本の作家さんが書くのであれば哀願の言葉はもっと多彩だったんだろうなと思います。まぁ、この辺りは翻訳小説の難しいところですよね。

 この作品は原文では3部作で、今回の翻訳本にはそのうち2部までが収録されています。3作目も読んでみたいです。果たしてオリヴァーがヴィンセントを抱く日は来るのか気になります。


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元ハルヒラ 『虎穴ダイニング』

虎穴ダイニング (Canna Comics)

虎穴ダイニング (Canna Comics)

 ルームシェアの相手・日向さんは、頭部が虎で尻尾まで生えている自称覆面レスラー。「マスクです」と言い張るが、どう見ても素顔。そんな不思議な会社員日向さんとホストのアカルの同居生活が描かれます。

 頭部まるごとリアル路線な虎な男が攻め、という本作。彼が「覆面レスラーやってるから」の一言で済まそうとする冒頭の1ページ目、笑いました。面白すぎ。いやいやいや、可笑しいでしょその言い分は!マスクってレベルじゃないwと読者の誰もがつっこんだと思いますが、主人公のアカルは

「あ、すみません。プロレス詳しくなくて…」

と返します。そうじゃないだろ!と思わず主人公にもつっこみたくなりました。いやー、作家さんの掌の上で読者は転がされてしまう作品でしたw
 
 攻めの日向さんみたいな容姿の人が現代日本にいたら大騒ぎになっているはずですが、作中では主人公はもちろん、近隣住民も職場の人も道行く人も日向さんの虎頭を認識はしているものの、ヒステリックに騒ぎ立てたりせず受け入れています。この緩い感じの世界観は、ふんわりした絵柄とも相まって作品の雰囲気に合っていました。

 もちろん「絶対おかしいよ」と叫ぶ常識人なキャラが出てきて緊張感をもたらす展開もあります。また、虎頭に関する事情を知っていそうな鳴賀というキャラクターも登場しており、いよいよ日向さんの謎に迫るのか?日向さんは夢の中だけでなく現実でも素顔に戻れるのか?と面白い展開になりつつあったんですが、その辺りははっきり描かれない形で本書は終わっています。

 二人の恋愛模様も、両想いにはなったものの最後まではできていません。

 全一巻で完結、というのでもそこまでヘンじゃないけれど、もうちょっと虎頭についても恋愛についても進んだ状況を見てみたかったなぁと思っていたところ、数日前に2巻目が今月中に発売されると知りました。続いていたんですね~。2巻目では謎も解明されるんでしょうか。気になります。

 それにしても日向さん、萌えるキャラですよね。ごつくて体格も良いし、虎耳をへたらせたり尻尾をブンブン振ったりなど仕草が可愛いです。そしてなにより、虎の顔なのに喜怒哀楽の表情豊かなんですよ。黄昏ている顔、困惑している顔、真剣に考え込んでいる顔などきちんと描き分けられているんですからこれは本当に作家さんが凄いと思います。

 ケモミミ萌えの方は楽しめるのではないでしょうか。

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