イシノアヤ 『椿びより』
- 作者: イシノアヤ
- 出版社/メーカー: 茜新社
- 発売日: 2009/05/28
- メディア: コミック
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都会在住のおひとりさま男子、椿太郎。そして椿くんと偶然再会した中学時代の同級生である平岩と、その娘の史生。3人の緩やかな交流が描かれている漫画です。
あとがきに
これまで描いた漫画の中ではおとぎ話的な位置づけのものとなりました。
と作者さんのコメントが載っていましたが、まさしくそんな雰囲気のお話でした。
現実味はありませんが、椿くんのピュアでフワフワとしたキャラはなんか読んでいると癒されます。クリエイターとして可愛い雑貨や編み物の製作を一人自宅で行い、行き詰ったら気分転換に近所の公園に行って子供と戯れ、自転車でショプヘ納品に行く、――――こんな暮らしができたら楽しいだろうなー。クルクルとした巻き毛や、ユニセックスな容姿、どこかフェミニンな印象を受けるゆったりとした服装などとも相まって椿くんには妖精のような愛らしさがあります。
そんな主人公と平岩父娘はまるで家族のように時間を過ごすようになるのですが、父娘の椿くんの受け入れっぷりも少し浮世離れしていて興味深いです。椿くんの平岩への恋心は芽吹きつつあるものの、二人の関係は結局恋愛未満で終わっているので恋人同士という訳でもありません。なのに「家族のようなものなんだから」と娘の入学式に椿くんを呼ぶシングルファーザー平岩はこの状況をどう捉えているんでしょうね。友人というには親密すぎて、しかし恋愛関係ではなく、家族のようなもの。時を重ねつつ絆は十分に強まっているのに、名付けることの出来ない絆。この関係性を何と呼べばいいんでしょう?
優しい物語の心地良さを感じられる作品でした。
それにしてもこの漫画家さん、タッチに個性あるし、人物も背景も凄く安定して描かれていて絵上手いなぁと思いました。時々、ポストカードに出来そうと思わせるような、ハッとする印象的なコマがあります。