sorachinoのブログ

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峰島なわこ 『海とヘビースモーカー』

作画は峰島なわこさん、原作は榎田尤利さんというコラボ作品でした。この単行本には、海辺で繰り広げられる3カップルの話が収録されています。

まずは、表題作の『海とヘビースモーカー』について。肺がんに犯された男が、かつての恋人の故郷を訪れる話です。残念ながらオチがかなり早い段階でわかってしまったのであまり感動はしなかったけれど、気付いてなかったら個人的にもっと心に残る話になっていたかもしれません。ちなみに、単行本の表紙に描かれているのはこのお話のキャラですね。潮風が吹き抜けていくような田舎の海辺の雰囲気が伝わってくるイラストで良い感じです。

2話目は、信金勤めの冴えない中年男が海で自殺を試みようとしている若い美男子を拾う『海と王子様』。おっさん受けです。巻末のおまけ小説では、このカップルの攻めの華やかなバレエダンサーっぷりがうかがえます。

3つ目は、故郷から逃げるように上京してきた若い主人公の元に、幼馴染が転がり込んできて、その後ひょんなことから二人で地元へ帰省することになる『蜜柑の海』。収録されている3作品の中ではこれが一番好みでした。明るくて元気な受けと男前だけど無口な攻めという組み合わせは良いし、攻めが蜜柑農家というのも珍しくて面白いですし。作中、受けのお祖父さんが回想シーンで出てきますが、表情に味があって魅力的に描かれています。家族と和解し、忘れたい過去に向き直ってきっちり落とし前をつけ、攻めとの愛も確かめ合って、というラストなので読後感も良かったです。ただ、受けのトラウマが悲惨なんだけれど榎田さん作品ではありがちな事象でして、榎田さんの小説が好きでよく読んでいる分、この手のエピソードには食傷気味であるのは否めません……。トラウマの理由はもうちょっと違うエピソードでも良かったかもと思ってしまいました。ところで、主人公の名前の継巳(つぐみ)って、字面は男の子っぽいけれど響きは女の子っぽくて可愛いですね。

ストーリー展開の意外性という面から言うと正直3作ともわりと先が読める演出だったかと。萌えもそこまで感じなかったなぁ。
けれど、海辺という舞台や峰島さんの画風もあってか、どの作品にも透明感が漂っていたのは良かったと思います。改めて海というモチーフの存在感や作品に与える叙情性というのを感じました。



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