あき 『花祭』
- 作者: あき
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2010/03/10
- メディア: コミック
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『オリュンポス』を読んだときも思いましたが、あきさんは魅力的な絵を描く漫画家さんだなぁという印象が強いです。
とにかくキャラクターが皆可愛い。髪が長く少女じみた容姿のキャラが多いことに加えて、髪の毛もふわふわと柔らかそうに描いているし、ふわふわした愛らしい花をよくコマに飛ばしているし、とにかくふわっふわのキラッキラで可愛いのです(頭の悪そうな感想ですみません……)。
それに、あきさんの漫画はキメ絵を本当にキメ絵として華やかに描きますよね。本作ならキメのシーンというと‘花’たちが芸を披露する場面ですが、細い線でしっかり書き込まれていたりフワリと花が飛んでいたりしてとっても特別なシーンなんだなと読んでいてわかります。そういうコマとそうではないコマの緩急のつけ方なんかも上手いなぁと思います。
この作品の中では、伝統芸能の歌舞音曲を生業とする少年たちは‘花’と呼ばれ、彼らを自らの資力でもって支援する財界人は‘花主’と呼ばれます。芸能者とパトロンたちが繰り広げる悲喜こもごもが描かれる作品であり、モデルは世阿弥と足利義満なのだそうな。正直、マイルドにアレンジした現代ものもいいけれど(とはいえ現代が舞台だとどうしてもあまりに現実離れした設定に思えてしまうし、それを補えるほど世界観の奥行きは感じられなかったけれど)、室町時代を舞台にして杉本苑子さんの『華の碑文 −世阿弥元清』ばりにエグくて耽美でガチな世阿弥漫画というのも読んでみたい気がする……。
ちなみに花と花主のコンビは何組か出てきますが、私は度量の広い若き富豪の逢江天弥と、舞の名手なのに舞台を降りると並はずれて不器用な犬王とがメインになる『斜交の逃水』が好きでした。天弥がいいキャラしてます。