中村明日美子 『鉄道少女漫画』
- 作者: 中村明日美子
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2011/01/31
- メディア: コミック
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タイトル通り、鉄道にちなむストーリーが繰り広げられるオムニバスでした。厚木や新百合ヶ丘といった駅名が登場し、小田急沿線が舞台となっています。鉄道を絡めた漫画というと男性向けが多いので、少女漫画でというのは珍しいですね。ここ数年で鉄女という言葉が広まってきましたが、そういう流れの中で本作も出てきたのかな。
私はあんまり鉄道に詳しくないので鉄女と名乗るのはおこがましいのですが、鉄道にロマンがあるというのはなんとなく感覚的にわかる気がします。たまたま同じ車内に乗り合わせた他の乗客をぼんやりと眺めていると、途方もないなぁと感じる時があります。ここにいる一人一人に意志があってまったく違うことを考えていて、どこの駅から乗ってきたのかもどこの駅で降りるのかも違っていて、そしてそれぞれの人生を歩んでいるのですよね。そんな年齢も性別も職業も異なる人々が、たまたまその時だけ車内の時間を共に過ごし、そしてもう二度と会うことはないという一期一会。なんか当たり前のことだけれど、改めて凄いなーと感じたりします。
この『鉄道少女漫画』では一部を除いて毎話主人公が変わり、各話は舞台が小田急線沿線という以外は特に共通項がありません。描き下ろしの短い最終話で、まったく違う人生を歩んでいるキャラクター達がお互いそうとは知らずに駅の構内や車内で一瞬だけニアミスしているという構成には、鉄道へのロマンを掻き立てられました。
7話収録されてますが、中でも印象に残ったのは『立体交差の駅』と『青と白のクリーム』でした。この2話の連作は、スポーツ好きな女子高生と綺麗な年上女性の間の恋愛を描いています。百合なのです。『立体交差の駅』の切なさもいいし、『青と白のクリーム』の甘酸っぱさもいい。そして何より、この2作品は登場人物のキャラクターがそれぞれ立っていて、読んでいて面白かったです。