sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説等の読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。どちらかと言うと新刊より古い作品に言及することが多いかも。ネタバレ多数。コメント大歓迎です。

山中ヒコ 『王子と小鳥』

王子と小鳥 (花音コミックス Cita Citaシリーズ)

  • 受け:鈴木圭一(22)
  • 攻め:ハーリド(21)


砂漠の国の第二王子×日本人美大生。
とても良かったです。好きだなぁこういうお話。

【どぎつくない、優しく切ないあらぶもの】

借金のため売られた受けがオークション会場で砂漠の国の王族攻めに買い上げられたり、奴隷にされて宮殿に囚われたり、女装っぽい恰好をさせられたりと聞くと、BL好きなら本を読まなくても大体の内容が予想できてしまうと思います。なにしろBL界のアラブものではありふれたベタな展開ですから。確かにベタなんだけれど、このベタな素材を本当にうまく処理しているのが本書です。
しかもあらぶものにありがちなどぎつさはなく、どこか作品全体に優しく切ない雰囲気が漂っていたのがとても良かったです。なんかこう、とても素敵な恋愛漫画読んだなぁ、とじんわりするんですよ。私の中であらぶもののイメージが覆されました。ベタなテーマでも新鮮さを感じさせるように料理できるってすごいなぁ。『王子と小鳥』という童話や御伽噺にありそうなタイトルも合っており、評判がいいのも頷けるなあと思いました。

優しく切ない雰囲気作りを助けているのが、静謐な攻めのキャラクターです。第二皇子として苦労しているせいか、若いのに包容力があって、言う台詞がいちいち詩的で良いんですよね。薬物を抜く苦しみから暴れる受けを押さえつけていたあと、優しく

「自分の赤子を抱いているようだった……」

と呟いたりとか、また一番美しい景色を見せに受けを砂漠まで連れ出したときの台詞

「……こんな乾いた世界は恐ろしいか」

とか。口数は少ないけれど色っぽい目が雄弁な人で、言葉が通じなくても受けが攻めに惹かれていくのがとても自然でした。

エピソードを積み重ねつつ、ゆっくりと互いへの理解と好意を深めていく2人。彼らが結ばれるのも、無理やりではなく合意の上で、しかも最高に盛り上がる切ないタイミングだったのも素敵でした。大事なものを他人にぐちゃぐちゃにされるくらいなら、取り上げられる前に自らの手で壊した方がマシだ、と幼い頃に思い知った攻め。そんな彼は、受けを献上せよと横暴な兄の皇太子に命令されてしまうのです。ああ、切ないー。
このお話は隙がないというか、無駄がないというか、読んでいるとよく練られてるなぁと感じさせられる演出が続きます。見せ方がうまいので、お話にとても引き込まれるのですよ。

【目を引く表紙】

そして、何といっても表紙が素晴らしい。とても美しくて作品の雰囲気にあった良い絵です。表紙買いした人も多かったんじゃないかなぁ。大きく面積を取る白い余白が大胆で目を引きます。シンプルなタイトルと作者名の字体も綺麗だし、カバーデザインの名和田耕平デザイン事務所さん良い仕事してるわー。

まとめ

素敵なラブストーリーでした。この一味違うアラブものBL漫画、おススメです。