sorachinoのブログ

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槇村さとる 『ドゥ ダ ダンシン!  ヴェネチア国際編  1〜3』


25歳とバレリーナとしては年齢的に後がない女性がクラシックバレエの最高峰ヴェネツィア国際コンクールで入賞することを目指す物語です。
この漫画を読んでいると、作家さんの「とにかく踊ってる姿を描きたいんだ―――!!!」という情熱がビンビンと紙面から伝わってくる気がします。なにしろ、踊る場面のオンパレードなのです。大きく足を開いて跳躍している姿、優雅に手を伸ばしてポーズを決めている姿、爪先まで神経を凝らしぐっと体をそらしている姿、ピンと背筋を伸ばして回転している姿……大ゴマをたっぷり使ってダンサーたちの身体をとても美しく描くんですよね。そのダンスシーンの多さは、ストーリーの進度の割りに巻を重ねてしまっている原因の一つになっていると思いますが、「踊る姿をこれでもか!と描くんだ!」という勢いには圧倒されます。


クラシックバレエの名作中の名作・白鳥を踊るにあたって、主人公・鯛子は古典とは何ぞや?という壁にぶちあたります。決まりきった型があるなんて表現をするのに不自由じゃないか、自らの個性は抑圧されるだけではないか、つまらない、古臭い、という考えに対して、龍一というキャラクターが鯛子にこう語ります。

「役がなければ個性もない ありのままの自分なんて楽ちんすぎてみっともない くだらなすぎ 手抜きすぎ 見せるのは失礼だ」

「一見アホみたいな王子であっても そのキャラクターを咀嚼して想像して洞察して 自分との違いと同じ所を探って近づいていく その過程で自分の想像力や感受性や性格や生き方が問われる」

「役の中に自分の真実を見つけて本物の感情を乗せた時 時代や人種を越えて人を感動させられる」

「くだらない自我を捨てた時 はじめて本物の個性が表面に出てくるんだ」

以上は1巻の場面。このように、龍一をはじめ指導者やライバルから型の大切さを学んだ3巻の鯛子は、

理想の型を絶対に崩さずに表現してみせる 型を超えるエネルギーを客席のうしろまで届ける―――!!

という気迫で、ヴェネチア国際への前哨戦である全日本グランプリに挑むのです。
アツい!アツいよ君たち!
この踊りにかけるキャラクターたちの真剣さと情熱が、やっぱり読んでて心に迫るんだよなぁ。


ところで私は男性陣なら三上派ではなく、龍一王子派。彼が鯛子の踊りのパートナーを勤めるこのヴェネチア国際編1〜3は、登場頻度が高い上に読んでてニヤニヤしたくなる言動が多くて嬉しいです。表紙も鯛子と龍一のツーショットだし。プライドが高くて高圧的で不器用な龍一王子ではありますが、彼は三上やウォンに対して嫉妬心丸出しで鯛子を手に入れようとしている。この作品のヒーローはどう見ても三上だから龍一と鯛子が成就することはなさそうだけれど、

「ただ俺が彼女といたい」

とまで自分の気持ちを認めた龍一は応援せずにはいられません。主人公だけでなく、彼の行く末も気になるところです。