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sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説等の読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。どちらかと言うと新刊より古い作品に言及することが多いかも。ネタバレ多数。コメント大歓迎です。

basso 『amato amaro』

amato amaro (EDGE COMIX)

イタリア政治家シリーズ第2弾。前巻の主役カップルは、今回脇役に回っています。
相変わらず表紙が美しい。このマットなグリーン、綺麗です。


表題作はボディガード×経済学者のお話。気だるげな眼といい、あごひげといい、襟足の立った髪型といい、さらにスーツを着こなす長身痩躯といい、攻めのアルマンドの容姿が非常にセクシーでシビれました。個人的に、bassoさんの描いた中で一番色気を感じたキャラかもしれません。ファッションモデルをやってほしいくらい。寡黙で無駄口を叩かないところも好みです。

それにしてもこの作品の受けはとんでもない天邪鬼ですね。攻めへの口説き文句は、挑発にしても結構酷いような……(笑)。こんなこと言われたら普通の人は心証最悪になると思うんだけど、これで攻めを落とせると踏んでいる受けは天邪鬼じゃなかったら相当な自信家なのではないでしょうか。まぁ実際、最終的に攻めを落としているのはお見事ですが。


この短編漫画集の中で一番好きだったのは、『differenza(ディッフェレンツァ)』でした。兄であるパオロの結婚を祝うため、双子の弟であるマウロは、ゲイのパートナーを連れて緑豊かな田舎町へと帰郷します。まともな道を歩み父のお気に入りのパオロと、父の覚えがめでたくないマウロ。父とマウロの関係が悪化したのは、マウロが男を家に連れ込んでいるのを父が叱責したからなのですが、実はこれは父による誤解で、家に男を連れ込んだのはパオロだったのでした。パオロも、マウロも、その誤解を解かないまま大人になったのです。

この兄弟、本当に切ないわ~。パオロは、ありのままの自分を家族に知らせることなくずっと「決まったルートを歩いて」生きていくんでしょうね。

マウロは一緒に歩むパートナーがいるけれども、それでも父の愛を得られないのは辛いよなぁ。人生って恋愛だけじゃないですから、愛するパートナーがいれば他の人には理解されなくても構わない、というものでもないでしょうし。

短くも、切なくほろ苦いお話でとても印象に残りました。



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basso 『クマとインテリ』

クマとインテリ (EDGE COMIX)

イタリア政治家シリーズ第1弾。

抑えた色調の中にソファの赤が映える表紙、格好良すぎですよね? お洒落度ハンパない……! このインパクトにそそられて、つい表紙買いした人も多かったのではないでしょうか。


表題作『クマとインテリ』は、カメラマン×インテリ政治家のお話でした。

受けのファウストは、前首相かつ現党総裁という、これでもか!と言わんばかりの豪華な肩書を持っています。首相を務めた経験があるくらいですから年齢もかなりいっているわけで、しかも妻子持ちですし、そんな初老男性を受けさせるとはこれまたもの凄いところに萌えを発見するなぁ、と初めてこの本を読んだときは作者さんの発想に度肝を抜かれました。

しかも、攻めは26歳という若さで、親子ほどの超年の差カップルなのですよ。凄いな。

最初はこのお爺ちゃんな受けに萌えるのは難しいかもなぁと心配しつつ読んでいたんですが、読み進めるうち、バカンスから帰ってきた後に攻めの名刺を眺めて嬉しそうにしているあたりから、受けの可愛いらしさがわかってきました。ブルーノの正体に一喜一憂する恋するファウストは、妙なヘタレっぽさとも相まって確かに可愛いんですよ。

ところで、攻めのブルーノはクマ系とのことですが、あんまりクマっぽく見えないような……。せっかく『クマとインテリ』というタイトルが素晴らしくキャッチ―なので、イタリア政治家シリーズ第3弾で登場するウーゴくらいブルーノががっしりした大柄でも良かったかなーと思いました。



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縞田理理 『モンスターズ・イン・パラダイス』 全3巻

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (2) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (2) (ウィングス文庫)

  • 主人公:ジョエル・H・ホープ(20)
  • 相棒:カート・V・ウェステンラ

人間とモンスター―“神話的人類”の共存する大都会、アイオニア連邦ブルームフィールド市。田舎から出てきたばかりの新米捜査官ジョエルは、着任早々“神話的人類”専門の部署に配属される。実は“神話的人類”恐怖症のジョエル。だが、コンビを組むことになったカートは、意地悪でひねくれ者で、しかも吸血鬼だった…!!

主人公ジョエル・H・ホープの名前のHとはヒューマンを表していて、相棒のカート・V・ウェステンラのVとはヴァンピールのVだそうです。

吸血鬼小説は以前から好きでして、書店や図書館で見かけるとついチェックしてしまいます。一般書では菊地秀行の『蒼き影のリリス』シリーズやシャーレイン・ハリスの『満月と血とキスと』なんかが好きですが、この本も吸血鬼が登場する本のお気に入りの一つとなりました。古い作品ですが、面白かったです。

モンスターが闊歩する世界観

このお話は世界観がとてもファンタジックで魅力的です。

吸血鬼や狼人間、マーメイド、セイレーン、半人半馬のセントール、ミノタウロススフィンクスなどの神話的人類が、市民権を得て人間と日常生活をともにする隣人、という設定になっています。

何気なくポクポクと道を歩いるセントールとすれ違ったり、食事の席でヴァンピールと隣り合ったり、スフィンクスとエレベーターに一緒に乗ったり、という生活を想像すると凄くワクワクするなぁ。いや、でも、蛇頭は実際会ったら怖いでしょうが…。

私のお気に入りの神話的人類は、セントールのトリストラムと、スフィンクスのレオニダスです。どちらも上半身が人間で下半身が四足というキャラクター。この本のおかげでそういう半人半獣萌えに開眼しましたよ。

明確なテーマ

作中世界において、神話的人類たちは差別の対象となるマイノリティとして描かれています。ジョエルは彼らと交流を持つ中でその現状に触れ、やがて差別を無くしていこうと決意するのですが、この差別の問題は作品全体を貫くテーマとして打ち出されていました。

もちろんそういう問題を扱っているだけにちょっと説教臭さが漂っている気がしないでもないですが、ジュブナイルらしい清爽さがあります。

物語序盤のジョエルは、お人よしで性格も良くて正義感や良識もあるけれど、神話的人類への差別的な感情や同性愛カップルへの偏見も捨てきれていない一般人として描かれています。

例えば、雄のスフィンクスと成人男性の人間がキスしている場面を見て、男(雄)同士であることを奇異に感じ、さらに人間と神話的人類という異種族が睦みあっていることへの嫌悪を感じています。

こういう小市民的な部分のあるキャラが成長していく姿には好感がもてますね。

成長と言えば、ミリシャという吸血鬼の少女も、全3巻を通して大きく成長したキャラでした。1巻を読んでいる時点では、一介のメイドがああいう風に強くなっていくキャラだとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。

バディもの

純朴な若者とひねくれ者な美形の吸血鬼が事件解決を通してバディとしてお互いに信頼を育みあっていく過程も良いんですよ。これぞバディもの、という感じで。

ちなみにブロマンス要素ありと言えども、ウィングス文庫なので主人公と相棒(両方男)はカップルではなくあくまでもコンビというレベルでとどまっています。ジョエルはミリシャという女性の恋人候補も出来ますしね。

作品全体通して直接的なやおい描写はあまりありませんが、しいて言うならレオニダスとその主人エルモーライがキスしてたことくらいでしょうか。この二人は、挿絵画家の山田睦月さんによる3巻の巻末イラストで、凄くラブラブな姿を見せていてちょっと笑いました。エルモ、良かったね。

まとめ

重すぎず軽すぎず、爽やかなお話でした。

キヅナツキ 『リンクス』

4組のカップルのお話が入った短編漫画集。

  • ラジオパーソナリティ×カフェ店長
  • カフェオーナー×ヤクザの秘書兼護衛
  • 彫金師×サラリーマン
  • ヤクザ(若頭)×組長の息子

各話は同一世界を舞台にしています。同じマンションのお隣さん同士、上司と部下、店員と常連客、高校時代の先輩後輩などと、登場人物たちは互いに面識があるという設定。


4組の中では、私は彫金師×サラリーマンが一番好きでした。出会いの日から一日ごとに近づいていく二人の距離感が良いです。猫と戯れつつ、一緒にごはんを食べる心地よい関係が自然でした。

あ、ちなみにこの二人は受け攻め逆かもしれないという示唆がおまけの
4コマ漫画や人物紹介にありましたが、私は長身でガタイの良い彫金師・亀田攻めの方がイメージしやすいなー。

亀田の方から告白していましたが、いくら気が合うとはいえヘテロ相手に恋愛関係まで持ち込んだのはお見事。告白に至るまでの詳細は描かれていないので、サラリーマン荻川のSっぷりも含めてそこらへんも読んでみたかったですね。

それにしても、亀田は4組目のカップルの受け・忍のセキュリティ兼監視もやっているそうですが、やっぱり裏社会に片足突っ込んでいるということなのかな? お洒落かつ繊細そうな表紙のイラストを裏切って、この本に出てくるキャラクターは亀田といい、忍とその同居人の佐渡といい、2組目のカップルの攻め・弥彦といい、裏社会の人間が結構多くてびっくりでした。


キャラ単体だとカフェ店長の新発田も可愛くて良かったです。ちょっとフレンドリー過ぎて(馴れ馴れしいとも言う)ウザいキャラですが、人懐っこさや明るくて凄くラブリーでして。31歳の立派な成人男性なのに愛くるしい人って凄いです。


4組目は高校時代から10年以上付き合っていて半同棲状態にある二人がメイン。

彼らはとある交通死亡事故の遺族と、事故のもう一方の生き残った当事者という関係でもあるのです。そのせいで受けは攻めに対して贖罪意識を持ち、攻めも受けの贖罪意識に付け込んで縛り付けてしまっているという罪悪感を持っています。

攻めの亡兄は故人でありながら強く存在感を放っており、ラスト、攻めの夢の中で登場し遺された者たちを祝福するシーンは切なくもエモーショナルな仕上がりになっていました。

それにしても、ドビュッシーの月の光を何気なく鼻歌で歌うとは、忍はお洒落さんですね~。この曲、結構鼻歌で歌うの難易度高いと思うんですが。


ところでこの本の難点を言いますと、とにかくキャラが識別しずらいのが読者泣かせでした。まず1組目の受けと、2組目の攻めと、3組目の受け(暫定)が似ているし、1組目の攻めと2組目の受けと3組目の攻め(暫定)も似てるんですよ。初読の時は困惑しまくりで、巻末のプロフィールを読んでやっとキャラを把握できたという感じでした。もうちょっと描き分けがされていれば良かったと思います。


ただ、絵は全体的に非常に綺麗でした。キヅナツキさんの作品は初めて読みましたが、違う単行本も読んでみたくなりました。



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田亀源五郎 『弟の夫』 2

弥一と夏菜の父娘、そして弥一の亡弟と同性婚していたマイク。そんな3人の交流を丁寧に描いた第二弾。


マイクの弥一の家への滞在が、主人公弥一の父子家庭だけではなく、その周辺の地域社会にも少しずつ影響を及ぼしていく様子が描かれていました。

夏菜の友人の兄でゲイの中学生がマイクの存在を知ってこっそり会いに来るエピソードでは、マイノリティの子供が身近なロールモデルを渇望する姿が描写されています。

私自身の幼少時を思い返した時、田舎というほどでもない関東郊外のベッドタウンで育ちましたが、セクシュアルマイノリティの大人は家族・親戚・学校・近所など周囲に見かけた記憶がありません。もちろん実際にはいたのかもしれないけれど、オープンにしている人は見当たらなかったですね。初めて男性同士で手をつないで歩いているカップルを路上で見かけたのも高校生になってからだったような……。

現在の日本では、まだまだテレビの中や創作物の中ではない、生きている存在としてのロールモデルを子供たちが見かける機会というのは少ないんだろうな。


11話の鏡の中に映る自分の顔、月明かりに照らされる自分の影、そういったものの中に亡くなった双子の弟の姿を見て弥一が語りかけるシーンが良かったです。

このシーンのある11話は、特に啓蒙的というか教科書的というか、ちょっと学校の道徳の授業で使う教育読本のような読後感もあるんですが、やはり弥一が導き出した結論は感動的です。


それにしても、この漫画の圧倒的な読みやすさは素晴らしいなぁ。作画も上手くて安定感が凄いし、コマ割りも端然としていて、各エピソードのテーマも明確で分かりやすい。本当にスイスイと読み進められます。

本作は第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したそうで。おめでとうございます。