sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。2018年は月一更新を目指し、毎月15日0時更新予定。

イシノアヤ 『椿だより』

椿だより (EDGE COMIX)

前作『椿びより』から年は経ち、椿くんの生活にささやかな変化が起きた。平岩の娘の史生は小学生になり、友達夫婦に赤ちゃんができた。一見代わり映えしないバツイチ男の平岩とマイペースな椿くんにもささやかな変化が…? 人と人とがめぐりあい、そだててゆくつながり、それはかけがえのない宝物――


椿びより』の続編です。シリーズの2巻目にあたります。

日常系漫画というのでしょうか、特にドラマチックな大事件が起きるわけでもなく、日々のささやかでほのぼのとした出来事を描いています。中心となる登場人物は、フリーランスで生計を立てる若者・椿と、その中学時代の同級生である会社員のシングルファーザー・平岩、そして平岩の娘・史生の3人。椿は頻繁に平岩家に出入りし、一緒に夕食を摂ったり、お泊りしたり、旅行に行ったりするほどの大変な仲良しです。


平岩の誕生日エピソードとか、王道だけど愛らしくてたまりません。癒されるなー、この漫画。作中に漂う空気感が実に和やかでのんびりとしていてキャラクターもみんな愛すべき人達で、読んでいると俗世間の煩雑さを忘れてしまいそうになります。疲れている方はぜひ読みましょう!リラックス効果が半端ないですよ。


本作の発行元は、公式サイトでボーイズラブレーベルであることを明記しているEDGE COMIXですが、前作『椿びより』に引き続き、この『椿だより』でも恋愛についてはほぼ描かれていません。椿と平岩はとても親密な関係性を築いており、それは一般的な社会人同士の友情を超えているように見えますし、もはや家族だろ!いっそ恋人でも夫夫(ふうふ)でもいいよ!と言いたくなる距離間の近さなのですが、椿も平岩もお互いを恋人だとは思っていないのです。5年間もそんな交流を続けておきながら、結局二人は付き合っていないまま本作のラストを迎えていますからね。


BL愛好家のサガとして、もちろん、二人には恋人同士としての関係性に着地してほしい!という気持ちは私にもあります。実際、二人きりで遊園地に行って遊び倒し最後には観覧車に乗るエピソードには恋の予感を感じてドキドキワクワクしました。

とはいえ、正直恋人になって欲しいという思いはかなり薄いのも確かでして。BL作品を読んでいて友達以上恋人未満の関係性で終わると物足りなさを感じてしまうのが常なのですが、本作に限っては、なんかもうこのままで充分なんじゃ…?という気がするんですよ。恋愛関係こそが至上という訳でもないですし、このまま親密な関係を保ちつつ休日を一緒に過ごしたり史生の成長を見守っていけたら、恋愛や性愛の関係を結ばなくても椿も平岩も史生も幸せなんじゃないか? 椿の天使じみたピュアさと、平岩父娘の傍で幸せそうな様子を見ているとなぜかそう思えてなりません。椿の姉は弟を心配して「そんな関係おかしい!」と言うのですが、傍目にはどれほど奇妙に見えようと本人たちがそれで幸せなら良いのでは、と思わせる説得力が彼らの微笑ましい日常のエピソードの積み重ねにあります。

でも、そうだな、私としては別に無理に恋人関係にならなくてもいいけど、いずれ椿には平岩家に同居してほしいかな。一緒に暮らしてほしいです。


本作ラストでは、椿が自分の心の内に気付いた描写が挿入されています。たぶん、恋心を自覚した、ということを示しているのだと思いますが、この後の展開は描かれていません。椿と平岩のホレタハレタに興味が無いわけではありませんが、この穏やかな作品には優しい雰囲気のまま終結するのがふさわしいと思います。


それにしても、しみじみ思うけどイシノアヤさん絵上手すぎですね……! 本当に上手い。安定感が凄まじい。どのコマを見ても決まってる。ポストカードにしたい。