sorachinoのブログ

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今市子 『あしながおじさん達の行方』 全2巻

施設育ちの春日には、月に一回手紙をくれ、学費援助してくれる五人の「あしながおじさん」がいる。一言お礼を言おうと彼らを探し始めた春日は、マンションの管理人・夏海と彼を愛す也寸尋となぜか男三人暮らしに…。


恋愛が主題ではなく、主人公の少年の出生の秘密を探る「あしながおじさん探し」がメインのお話という、BL漫画らしからぬBL漫画です。同時に、今市子作品のエッセンスが随所に散りばめられ、実に今市子らしい作品でもあります。

第一話は1998年に雑誌掲載されたそうなので、つまり20年前の作品ということですね。私が手に入れたのはたぶん15年位前だったかと思いますが(自分の腐女子歴の長さに我ながらビビります)、今回感想を書くために久々に読み返してみたら結構細かい所を忘れていて、「あしながおじさん探し」の展開をワクワクしながら読むことが出来ました。

全編コメディ風味な作品ですが、時にしみじみする場面もあり、シリアスかつ衝撃的な展開もあり、全2巻を一気に読み終えました。


本作はあらすじで思いっきりネタバレしていて正直どうなんだろと思わないでもないですが、タイトルにも「あしながおじさん達」とあるように、主人公を10年以上に渡って匿名で援助してきた篤志家は一人ではなく複数います。

5人が少しずつお金を出し合って一人の「あしながおじさん」を演じ、一人の子供の成長を見守っていた、ということですね。彼ら5人は、老若男女さまざまで、抱える事情も思惑も主人公春日との関連もそれぞれ異なります。

例えば、秋吉という「あしながおじさん」の内の一人。可愛らしく健気で私のお気に入りのキャラです。この人は、一番最後にそのプロジェクトに加わりました。というのも、元々「あしながおじさん」のうちの一人である恋人と何かを共有したくて自分も後から加わったからなのですが、秋吉は一度だけ春日の卒業式ものぞきに行ったことがあるそうで。

恋人との間に自分の子供を持つことが出来ない事情を抱える秋吉にとって、陰ながら特定の子供の成長を見守るというのは、じんわりと喜びを感じる機会だったのではないかな……と思います。


私は2巻の巻末に収録されている描き下ろしが好きなんですが、これは「あしながおじさん達」も主人公春日も、それぞれの人生を前に進んでいく様子が描かれているからです。この描き下ろしがあったからこそ爽やかな読後感になりました。

「僕は両親とは縁がうすかったんだって思ってるから」
その分他の人間との縁は大切にしなくちゃ…なんて最近思ってる

ラストでこういう結論に至れる15歳の春日くん、大人だなぁ。不器用ながらも、飄々としなやかに生きていってほしいなぁと思います。


ところで、これを言っては身も蓋もないかもしれないけれど、春日の周囲にいる大人達や「あしながおじさん達」は、やっぱり15歳の春日には真実をすんなり話しても良かったんじゃないかなぁと思うのですよ。自分が春日の立場だったら知りたいと思うだろうな。
あと、ヤスの高校のランク下げさせるのは普通に酷いぞ夏海。リカちゃん、元教師の杵柄でヤスと春日の大学受験対策してやってあげて欲しいです。リカちゃんが一番頼りになる人だわ…!