sorachinoのブログ

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縞田理理 『モンスターズ・イン・パラダイス』 全3巻

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (2) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (2) (ウィングス文庫)

  • 主人公:ジョエル・H・ホープ(20)
  • 相棒:カート・V・ウェステンラ

人間とモンスター―“神話的人類”の共存する大都会、アイオニア連邦ブルームフィールド市。田舎から出てきたばかりの新米捜査官ジョエルは、着任早々“神話的人類”専門の部署に配属される。実は“神話的人類”恐怖症のジョエル。だが、コンビを組むことになったカートは、意地悪でひねくれ者で、しかも吸血鬼だった…!!

主人公ジョエル・H・ホープの名前のHとはヒューマンを表していて、相棒のカート・V・ウェステンラのVとはヴァンピールのVだそうです。

吸血鬼小説は以前から好きでして、書店や図書館で見かけるとついチェックしてしまいます。一般書では菊地秀行の『蒼き影のリリス』シリーズやシャーレイン・ハリスの『満月と血とキスと』なんかが好きですが、この本も吸血鬼が登場する本のお気に入りの一つとなりました。古い作品ですが、面白かったです。

モンスターが闊歩する世界観

このお話は世界観がとてもファンタジックで魅力的です。

吸血鬼や狼人間、マーメイド、セイレーン、半人半馬のセントール、ミノタウロススフィンクスなどの神話的人類が、市民権を得て人間と日常生活をともにする隣人、という設定になっています。

何気なくポクポクと道を歩いるセントールとすれ違ったり、食事の席でヴァンピールと隣り合ったり、スフィンクスとエレベーターに一緒に乗ったり、という生活を想像すると凄くワクワクするなぁ。いや、でも、蛇頭は実際会ったら怖いでしょうが…。

私のお気に入りの神話的人類は、セントールのトリストラムと、スフィンクスのレオニダスです。どちらも上半身が人間で下半身が四足というキャラクター。この本のおかげでそういう半人半獣萌えに開眼しましたよ。

明確なテーマ

作中世界において、神話的人類たちは差別の対象となるマイノリティとして描かれています。ジョエルは彼らと交流を持つ中でその現状に触れ、やがて差別を無くしていこうと決意するのですが、この差別の問題は作品全体を貫くテーマとして打ち出されていました。

もちろんそういう問題を扱っているだけにちょっと説教臭さが漂っている気がしないでもないですが、ジュブナイルらしい清爽さがあります。

物語序盤のジョエルは、お人よしで性格も良くて正義感や良識もあるけれど、神話的人類への差別的な感情や同性愛カップルへの偏見も捨てきれていない一般人として描かれています。

例えば、雄のスフィンクスと成人男性の人間がキスしている場面を見て、男(雄)同士であることを奇異に感じ、さらに人間と神話的人類という異種族が睦みあっていることへの嫌悪を感じています。

こういう小市民的な部分のあるキャラが成長していく姿には好感がもてますね。

成長と言えば、ミリシャという吸血鬼の少女も、全3巻を通して大きく成長したキャラでした。1巻を読んでいる時点では、一介のメイドがああいう風に強くなっていくキャラだとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。

バディもの

純朴な若者とひねくれ者な美形の吸血鬼が事件解決を通してバディとしてお互いに信頼を育みあっていく過程も良いんですよ。これぞバディもの、という感じで。

ちなみにブロマンス要素ありと言えども、ウィングス文庫なので主人公と相棒(両方男)はカップルではなくあくまでもコンビというレベルでとどまっています。ジョエルはミリシャという女性の恋人候補も出来ますしね。

作品全体通して直接的なやおい描写はあまりありませんが、しいて言うならレオニダスとその主人エルモーライがキスしてたことくらいでしょうか。この二人は、挿絵画家の山田睦月さんによる3巻の巻末イラストで、凄くラブラブな姿を見せていてちょっと笑いました。エルモ、良かったね。

まとめ

重すぎず軽すぎず、爽やかなお話でした。