sorachinoのブログ

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田亀源五郎 『弟の夫』 2

弥一と夏菜の父娘、そして弥一の亡弟と同性婚していたマイク。そんな3人の交流を丁寧に描いた第二弾。


マイクの弥一の家への滞在が、主人公弥一の父子家庭だけではなく、その周辺の地域社会にも少しずつ影響を及ぼしていく様子が描かれていました。

夏菜の友人の兄でゲイの中学生がマイクの存在を知ってこっそり会いに来るエピソードでは、マイノリティの子供が身近なロールモデルを渇望する姿が描写されています。

私自身の幼少時を思い返した時、田舎というほどでもない関東郊外のベッドタウンで育ちましたが、セクシュアルマイノリティの大人は家族・親戚・学校・近所など周囲に見かけた記憶がありません。もちろん実際にはいたのかもしれないけれど、オープンにしている人は見当たらなかったですね。初めて男性同士で手をつないで歩いているカップルを路上で見かけたのも高校生になってからだったような……。

現在の日本では、まだまだテレビの中や創作物の中ではない、生きている存在としてのロールモデルを子供たちが見かける機会というのは少ないんだろうな。


11話の鏡の中に映る自分の顔、月明かりに照らされる自分の影、そういったものの中に亡くなった双子の弟の姿を見て弥一が語りかけるシーンが良かったです。

このシーンのある11話は、特に啓蒙的というか教科書的というか、ちょっと学校の道徳の授業で使う教育読本のような読後感もあるんですが、やはり弥一が導き出した結論は感動的です。


それにしても、この漫画の圧倒的な読みやすさは素晴らしいなぁ。作画も上手くて安定感が凄いし、コマ割りも端然としていて、各エピソードのテーマも明確で分かりやすい。本当にスイスイと読み進められます。

本作は第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したそうで。おめでとうございます。


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