sorachinoのブログ

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草間さかえ 『どこにもない国』

どこにもない国 (EDGE COMIX)

この本の何が素晴らしいって表紙ですよ。この力強い青空とブルーの海、自然と目が惹きつけられますよね。そんな浜辺に立つ二人の兵装の男。美しくて潔いイラストです。
一見雲に紛れているかのような白字のタイトルといい、青字の宣伝文が書かれた半透明の帯といい、装丁も素敵でした(帯は↑の画像には出ていませんが)。
こんな美しい本、書店で見かけたら手に取らずにはいられません。

戦時下の南方戦線、森の中で上官(受け)と若い部下(攻め)が二人っきりで過ごす表題作『どこにもない国』。そして終戦を迎えて日本に帰国した彼らがともに暮らし始める続編『パラダイムロスト』。巻末に季節外れの旅行をする二人の短い描き下ろし。
これら表題作カップルの話は、今巻に同時収録されている現代ものに比べてもページ数は少ないんですが、印象深かったです。引き揚げてきた兵隊さんに水やリヤカーを差し出す町の人の姿とか、戦地から久々に自宅に帰ってみたら赤の他人が我が物顔に移り住んでいたとか、恋愛には直接絡まないけれど当時の世相を反映するような描写が所々あって、なんか良いんですよ。『マッチ売り』『やぎさん郵便』でも感じたけれど、細々と丁寧な描写で作品全体の雰囲気を盛り上げるの草間さんは本当に上手いですよね。
表題作は2人の隠微なエロスも凄く良いです。楽園にいたかのような南の島でのつかの間の2人きりの生活を時折思い出しつつ、白々とした祖国で今後も暮らしていくんだろうな、という想像がつきます。



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