sorachinoのブログ

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木下けい子『いつも王子様が』

いつも王子様が (H&C Comics)

原作:月村奎


地味でオタクな受けが、意地悪なイケメン攻めに振り回されるコメディテイストなお話でした。

中学時代に部活の先輩に憧れていた主人公は告白をしますが、返事を聞かずにその場から逃げ出してしまいます。それっきりになっていた二人が、10年後にひょんなことから再会。先輩(攻め)は清掃会社の従業員になっており、後輩のエロ漫画家(受け)が依頼したハウスクリーニングサービスのスタッフとして受けの家にやってくるのです。

いっそ全くの赤の他人なら気にしないけれど、中途半端な知り合いに家の中を掃除してもらうのってプライベートが丸見えでかなり気まずいですよね。受けの驚愕と居たたまれなさはいかばかりだったでしょうか…(笑) 一方、攻めは何食わぬ顔でお掃除しながら受けの私物から生活ぶりを色々観察していたんだろうな~。部屋の隅から隅まで、そりゃもう詳細に。


ところで、アメリカには「ジョック」と「ナード」というスクールカーストがあるそうで、よく映画やドラマでネタにされていますね。ジョックは、マッチョなスポーツマンタイプの人気者で学内ヒエラルキーの頂点に立つ存在。ナードはその対極に位置し学内の主流派にはなれないオタク系やスポーツが苦手な人たちを指すんだとか。

『いつも王子様が』を読んでいて思ったのが、ジョックとナードが恋愛するとこんな感じになりそうだなぁ、ということ。この二人って性格は正反対だし、興味や趣味の方向性もかなり違う気がするんですが(共通点はテニスくらい?)、よくカップルにまとまったなぁ。自分にないものを持つ人を求めてしまうって感じなんでしょうか。でも、意地悪な攻めとドMな受けですからそういう意味では相性が良いのかもしれませんね。実際、攻めも

「俺たち割れ鍋に綴じ蓋のいいカップルだと思うよ」

と言っていますし。


ストーリーは攻めの言動のせいで誤解が積み重なっていく一方で体の関係は始まり受けは苦悩して……というもの。「誤解」は、先輩が自分に構うのは金目当てなのではないか?という受けの懸念のことを指します。もちろんお金が目当てなのではなくて、ただ単に会う機会を増やしたかったからという可愛らしい動機が真相だったのですが、結果的に攻めが受けの気持ちに付け込んでたかっている形になってしまったのは確かなんですよねぇ。ああいうアプローチの仕方は、相手を傷つけるものだと思いますよ、先輩。

一方で、受けも不用意に攻めの仕事である清掃業に対して失礼な言及をしてしまう場面がありました(受け自身も自分の職業に引け目を感じているからこそポロッと出てしまった言葉だったのでしょうが)。確かに受けのあの言い方は、清掃業の人から見ればカチンと来るでしょう。根に持った攻めがいちいち嫌味を受けに言う場面があり、ちょっと笑いました。

なんだかこの本って、ポップで可愛らしい表紙イラストだとか「王子様」という単語の入っているタイトルの割には、妙に金銭的な面や職業の社会的ステータスなどの際どいネタも結構描かれているのが印象的です。


ところで、受けのご近所さんでデリカデッセンを営む堀という男性が登場するんですが、この堀さん、優しくて温厚なキャラクターで癒されました。綺麗なお兄さんという感じ。この人を主人公にした月村奎さんの小説『眠り王子にキスを』も読んでみたくなりました。


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