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sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説等の読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。どちらかと言うと新刊より古い作品に言及することが多いかも。ネタバレ多数。コメント大歓迎です。

秋月こお『スサの神謡』

スサの神謡(かみがたり) (キャラ文庫)


古墳時代前期、吉備国(現在の岡山県)あたりが舞台のお話です。日本神話や温羅伝説をモチーフに描かれています。

作者の秋月こおさんは以前ヤマトタケルを主人公にしたBL『新ヤマトタケル伝 やまとツインズ』シリーズを出していますし、また別のペンネームでも日本神話を下敷きにした児童文学を書いていますから、こういうモチーフはお好きなようですね。私も好きなんですよ。日本神話ベースのBLはまだまだ少ないので、個人的にこういう作品が出てくれることは大歓迎です。


本作の攻めは三貴子の一柱、スサノオです(作中ではスサと呼ばれています)。神の身ながら、ふとした気まぐれで血肉を備えた人の子として生まれてみることにします。生まれてみればそこは百済の北方、高句麗との激しい戦闘の相次ぐ土地で武将となったラオウ(人として名付けられたスサ)は、戦に飽き、部下を引き連れ平和な土地を目指して秋津洲に上陸します。それを出迎えたのが受けのイワレヒコ。彼はミカサの国の王に仕える巫でした。ミカサの国は、太陽の女神アマテラスの後見するヤマトの国による侵略の危機に晒されており、ミカサの王は先進技術を持ってきたラオウ達一行を利用しようと画策します。騒動に巻き込まれたラオウとイワレヒコは……、というストーリーでした。


日本の神様なのに外国の地に人間として生まれたという設定にかなりびっくりしましたが(しかも百済ですからね。日本書紀新羅に天降ったという一説があるので新羅ならまだしも)、ラオウ百済からの渡来人となっているのは、温羅伝説の要素を組み入れているからなのでしょう。ラオウは軍人の部下だけではなく製鉄後術を持つ工人の百済人部隊も率いており、ミカサの王との取引によって山奥にたたら炉を作ることになったりしますが、これは製鉄が盛んだったといわれる吉備の国が舞台らしい展開だなぁと思いました。


ミカサとヤマトの国同士の戦あり、スサノオとアマテラスの神同士の因縁の対決あり、巫の神降しの神事あり、渡来人と彼らが持つ先進技術の流入あり等と一つの要素だけでも十分1作品書けるほどの壮大なイベントが盛りだくさんでした。

そのわりに案外あっさり物語が終結した気がしますが、まぁこれは恋愛に主眼を置くBL作品ですからしょうがないですかね。むしろ、ちゃんとラブラブカップルのイチャイチャを盛大に書きつつ、またイワレヒコの体液が白い花に変じたりラオウの体液がイワナになったりなど頓狂ながらも古代神話の世界観らしいコネタも挟み、盛りだくさんのイベントをよくまとめたと思います。その辺はさすがベテラン作家さんです。

本作で私が一番気になったのは、地の文でやたら敬語がつかわれていることでした。イワレヒコ視点での文章であるということを示したいのでしょうが、一人称でもないのに

ラオウ様は、イワレヒコの耳元でクスッと笑い声をお立てになって、ささやかれた。

などと書かれているとどうも違和感を感じてしまいまして……。私はこの文体は慣れるまでかなり読み辛く感じたんですよ。雰囲気を出すための文章テクニックなのでしょうし、読む人によっては逆に萌えポイントになるのかもしれませんが。


それにしても主人公の名前はなぜイワレヒコなんでしょう? やっぱり神武天皇の名前からとったのかな。本作の主人公と神武天皇は立ち位置が全然別だし、性格的にもあまり重ならない感じがしますけどね。私はイワレヒコと聞くと、学生時代の社会科資料集に載っていた月岡芳年の絵『大日本名将鑑』で描かれている髭モジャモジャの厳ついおじさんをついイメージしちゃうんですが、今作のイワレヒコは華奢で女と見まがうほどの美青年キャラでした。最初読んだときはちょっと戸惑いました。

稲荷家房之介さんのイラストは美麗で眼福でした。表紙のイラストも良いですよねー。主人公の黒髪が美しいです。


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