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sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説等の読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。どちらかと言うと新刊より古い作品に言及することが多いかも。ネタバレ多数。コメント大歓迎です。

鹿乃しうこ 『君さえいれば…』

 『君さえいれば… 完全版』という新装版も発行されているようですが、私が持っているのはかなり前に購入したBAMBOO COMICS 2001年12月17日初版発行の旧版なので、この記事もそれに沿った内容になります。旧版は『完全版』とは異なり、『君さえいれば…』の第一話が収録されておらず読めるのは二話目からとなっています。二人が出来上がるまでのストーリーが描かれた第一話を読めないのは残念ですが、読まなくても状況はわかりますし二話目からでも充分面白かったです。

  • 町田謙二郎(26)
  • 町田耕造(45)

耕造と謙二郎は娘であり妻でもある奈々子亡き後も一つ屋根の下で暮らし続ける一見仲の良い義理の親子。しかし実は謙二郎は最初から奈々子の父・耕造に想いを寄せていて、病弱な奈々子も全てを承知で構造を謙二郎に託したのだった。真実を知った耕造は…?

舅と婿という珍しすぎるカップル

 表題作の『君さえいれば…』は、親子ほどに年の差のあるリバカップルのお話。この作品の何が珍しいって、四十路を越えた男ヤモメの舅と、若く情熱的な娘婿との恋愛が描かれているところです。耕造と謙二郎は、同じ会社の上司と部下であり、戸籍上は義理の父と娘婿でもあり、実は秘密の恋人同士でもある関係なんです。この複雑で密接な関係こそがこの作品の強力な売りであり面白さの一つなのですが、いやー、作者さん、凄い思い切ったカップルを作り出しましたよね! 

 スキャンダラスな間柄のお話なんですが、互いの妻は既に鬼籍に入っていて義父と義理の息子といっても重苦しい背徳感や葛藤や泥沼状態はありません。最初から出来上がってるカップルなのでむしろ全編通してラブラブという印象でした。職場も一緒でプライベートでも一緒でいつもイチャイチャしてて本当に仲良しです。犬を可愛がるエピソードもとても微笑ましいです。

 とはいえ、孫の顔が見たい謙二朗の母がしきりに再婚をせっつくため、ついに2人は謙二郎の実家にカミングアウトする羽目になる、という重大局面を迎えるのでした。母と弟を前にして啖呵を切る謙二郎、これは彼の強気っぷりがよくわかるシーンです。

「全くあんたって子は……昔っから情けないくらいオクテなんだから」
「オクテ?」
「だってあんたうちに女の子呼んだことあった? ないでしょう。バレンタインだ誕生日だってさんざんプレゼント貰っても連れて来るのは男の子ばかり」
「…何だよ。兄貴の彼女が来たら来たでいちいちケチつけてたくせに。俺のダチが二枚目揃いだって鼻の下伸ばしてたのぁ誰だ!?」
「なっそんなの今関係ないでしょーがっ」
「やっ…やめろよ兄貴も母さんも…っ。町田さんの前で恥ずかしいだろ」
「…あるんだよ。関係あるんだよ母さん」
「…?」
「母さんが鼻の下伸ばしてたあいつら全部俺の彼氏だったんだからな」

お母さんにとっては爆弾発言でしたでしょうね、これ。まぁ、でも謙二郎がオクテというのは誤解にも程がありますな。むしろ結構性には積極的なタイプでしょうから。
そして、この流れからの耕造の

「謙二郎君を僕に下さい」

は、やっぱり盛り上がるんですよね。 
コメディとエロ、そしてそこへカミングアウトと和解等家族ネタも混ぜ込んでくる鹿乃さん、上手いです。


オヤジキャラが可愛い

 耕造というオヤジキャラクターの愛らしさ(?)も凄く良かったです。耕造はオヤジですが、お茶目で可愛げがあるキャラなせいか、耕造受けも違和感はありません。若々しくて一途な熱血男の謙二郎に比べて、どちらかといえばおっとり天然系。ゴルフは下手なようですがお腹も出ていなくて良い体をしていますし、もちろん禿げてもいません。ルックスの良いおじさんです。

 ちなみに45歳とのことですが、年の割には老けているような………50代くらいに見えます。うちの職場にいる40代半ばはもっと若々しいですね。

濡れ場がすごい

 さすが鹿乃さん作品と言うべきか、この『君さえいれば…』は非常に性描写が強いです。情熱のままにがっぷり組み合う!という感じの熱々な濡れ場の数々……凄い、の一言です。

 しかもリバですし。海外のスラッシュ文化だとリバも多いと聞きますが、やはり日本のBL市場だと受け攻め固定が圧倒的に多いので、リバ作品は本当に貴重ですよね。

 ちなみに同時収録の読みきり短編『ライトハンドマン』もエロてんこ盛りでした。こちらは16歳の高校生が受けで、攻めは受けの父親である大学教授の教え子です。


 

【その他】

  • 謙二郎の友人の井沢って奥さん持ちだったのんですね!! よしながふみさんの『ソルフェージュ』に登場した後藤先生が妻子持ちというのと同じくらい意外でしたよ。絶対ゲイだと思ってた…w
  • 「鼻の下を伸ばす」という慣用句を男性を眼差す女性に対して使用しているのを初めて見ました。別に女性に対して使っても間違いではないのでしょうけれども、なんか“鼻の下を伸ばした母親”の絵を想像すると笑ってしまうな。こういう鹿乃しうこさんの会話文のセンスって好きです。あと母と息子の男の好みが結構一致していそうなのもさすが親子ですw面食いw
  • 社員旅行先の温泉で浴衣姿の謙二郎と耕造が卓球しているシーンでは、数年前に流れていたトヨエツと山崎努が宣伝していたビールのCMを思い出しました。このシリーズのCM、結構好きだったんですよ。懐かしいです。

【まとめ】

15年ほど前の作品ですが、今読んでも面白いです。天然の可愛いオヤジキャラ、年の差カップル、リバ等に萌える方にお勧めです。ただし、購入する時はせっかくなので『君さえいれば… 完全版』の方にしましょう。


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