sorachinoのブログ

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えすとえむ 『作品ナンバー20』

作品ナンバー20 (ビーボーイコミックス)

作品ナンバー20 (ビーボーイコミックス)

 『作品N°20』『ジャスト ノット ライク ア メリーゴーランド』『ラスゲアード』『en el parque』『le visiteur』の5つが収録されている短編漫画集です。

 それにしてもこの本、凄まじく買いにくい表紙でした……。ご覧の通り、素っ裸の男を抱きかかえる男がドドン!!と描かれているのですから、レジへ持っていくのに多大な勇気を要します。読者の愛を試しているのか!と書店のBL棚の前で煩悶しましたよ。まぁ店頭で買うんじゃなくてネットで買えば良いのでしょうが、近所の書店のBL棚が縮小されないよう出来るだけ店舗で買うようにしておりまして、恥ずかしさを堪えつつなんとか買ってきました。

 表紙に描かれているのは、表題作『作品N°20』に登場する絵画修復師モーリスと絵の中から飛び出してきた美青年イヴです。表紙だけではなく、作品中にも多数イヴのヌードが描かれており、しかもどれも素晴らしく美しいカットだらけで、えすとえむさんイヴのヌード描くの楽しかっただろうなー、と読んでいて思いました。本当に、この方の描く肉体は肉感的で美しいです。

 19世紀の絵画に描かれた美青年が絵から抜け出し、愛する人を求めて21世紀のパリを出歩く、というファンタジックな設定、面白いですよね。一休さんの頓知話屏風の虎を地で行ってます。「モナ・リザ」のモデルの人とか、もし絵から出てこれたら世界中の美術ファンが大喜びしそうです。

 作中にキャラの名前が被るケースが二つもあって少しそれは偶然が重なりすぎではないかと正直気になりましたが、画家のモーリスを求めるイヴの愛の深さが印象的で、短編としてすっきり綺麗にまとまったお話でした。



 『ラスゲアード』はスペインのグラナダを舞台にしたお話です。読後感が爽快で、表題作よりもこちらの方が好きでした。若い男性フラメンコダンサー・ヘススと、かつては一流の一座で活躍していたが今は小さな店で弾くだけの年配のギタリスト・アルバロのお話です。恋愛って感じの関係というよりは、フラメンコを愛する者同士の師弟愛的な関係という風に私は読み取りましたが、この二人の関係、グッときます。アルバロによって未来への明るい希望を手にしたヘスス。マドリッドで成功する彼の姿を見にマドリッドへやってくるアルバロ、そんな光景を見てみたいです。

 主人公の黒髪キャラのヘススは男前だし色っぽかったです。フラメンコというと女性のイメージが強いんですが、男性ダンサーもいるんですね。しかもスーツ着て踊るのか、と興味深く思いました。情熱的な踊りをスーツでやるってエロいです。
 
 作者はよくスペイン旅行に行くそうで、スペインを舞台にした作品を多数発表していますが(『en el parque』もスペインが舞台です)、その中でもこの『ラスゲアード』は一二を争うほど好きですね。アルハンブラ宮殿から程近いグラナダの歓楽街、石畳の通りにある小さな店に鳴り響くギターの音……現地の音楽が聞こえてきそうな雰囲気が漂っています。作者のスペイン愛がよく伝わってくる作品でした。



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