sorachinoのブログ

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たけうちりうと 『君の心に天使の輪』『夢に囁く天使の声』

祁内シリーズの2作です。BLなのかそうでないのか微妙な境界線上にある作品です。

このシリーズは各話に登場人物や作中の出来事の関連性は特にないのですが、祁内という男性が人生の岐路に立つ主人公に接触してきて様々な導きをする、という構図だけが共通しています。

ちなみに、商業誌未発表の祁内シリーズの短編『更地野』『にわたずみ』『夏椿』は作者さんがネット上で無料公開してくれていますので、ご興味のある方はお読みになってはいかがでしょうか。不思議な祁内ワールドを堪能できると思います。

祁内の正体が謎すぎていっそ面白いです。作中でもヒントは出されるんですが、これこれこういう存在なのですよとそのものズバリの親切な回答を作者は最後まで明かしていません。謎は謎のままという方針のようです。

この人、本当に何者なんでしょう?優しいけれど底知れない怖さがあって、一見優男風の年齢不詳の男。

読んでいくうちになんとなく祁内は死にゆく者の願いを一つ叶えてくれる存在なのかなー?という感じがしました。あるいは、死とひきかえに一つ願いを叶えることで死者の現世への未練を断ち切る死神なのかも。いや死神というよりは天使なのかな?? 『子守歌は着メロ』ではヨシキリの母鳥の、『バスレフの白い電話』では枯れた梅の古木の、『更地野』ではスクラップになった重機ガイアの、『にわたずみ』では香乃の、『夏椿』では車夫の願いを叶えています。

あれ、でもそう考えると『夢に囁く天使の声』では、一体誰のリクエストを受けて祁内は動いていたのかな。双子たち自身の願いを受けたということだと、死と引き換えに願いを一つ叶えてくれる存在という私の推測は間違っていることになりますね。

なんにせよ、祁内は大変魅力的で不思議なキャラクターです。彼が強引なのに丁寧かつ慈愛に溢れた物腰で主人公に接触してくる場面は面白いですよ。各話の主人公たちは宗教の勧誘かナンパかなどと誤解するのですが、このことに関して祁内自身が

「私はさまざまなかたとお会いし、いろいろな言葉をいただきます。詐欺師だったりストーカーだったり、多種多様ですが」

「たいていの場合、その人自身でさえ気がつかないほど心の奥深いところに眠っているそのかたの本質に近いものを表す言葉なのです」

と語っており、なかなかこの台詞は含蓄があるなぁと思いました。もし自分の前に人の本質を炙り出す鏡のような存在が現れたら自分は何と呼びかけるか?と考えるとちょっと怖いですね。

話としては『君の心に天使の輪』に収録されている『バスレフの白い電話』が好きでした。恋人同士が主役に来ているせいか一番BLっぽい雰囲気が漂っていますし、受けの天才化学者・久信が変人だけどとても可愛かったです。久信と主人公の修司との関係性はどこか映画『アマデウス』のモーツァルトサリエリを彷彿とさせるものがあり、幸福に恋人として結ばれた2人には幸せになってもらいたいなと思いました。


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