えすとえむ 『ハッピーエンドアパートメント』
ハッピーエンドアパートメント (シトロンコミックス) (CITRON COMICS)
- 作者: えすとえむ
- 出版社/メーカー: リブレ出版
- 発売日: 2011/08/12
- メディア: コミック
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スペイン、マドリッド。カジェ・フェリス(幸せ通り)の突きあたりに立つ、フィナル・フェリス(ハッピーエンド)と呼ばれるアパート。そこに住む人々の恋を描いた連作短編集です。BLですので登場するのが同性愛者の店子ばかりというのは当然かもしれませんが、それに加えて、裸族(?)やポリガミー、少年愛者、女装家、障害者、移民(脇役ですが)などとマイノリティの属性を持つキャラクターが多く登場しているのが印象的です。世間一般の規範から少しズレている形だったとしても、彼らなりのハッピーエンドを迎える姿が描かれていました。
3人でポリガミーな幸せを肯定する『ノエと双子』、少年の人形を作るのが得意な人形作家と少年の交流を描いた『マティアスとペペ』が私は好きでしたね。
『ノエと双子』は旧約聖書のノアの方舟を下敷きにしたエピソードです。ノアの方舟に乗れるのはつがいだけ。では、2人の恋人を持つノエは、どちらを選ぶのか……?という根源的な問いかけをもとにストーリーが作られています。泥沼の展開にすることは容易だったでしょうが、あえてすっきり綺麗にまとまっているのが良かったです。
『マティアスとペペ』は老いた人形作家が良い味出しています。大物音楽家に成長した若いかつての恋人に翻弄されちゃえばいいよ!
ちなみにメインとなるキャラクターは大家のラジオDJ×売れない小説家です。このカップルの場合は偶然があまりに重なりすぎてて、なんかそこが少し引っ掛かってしまいました。
今回のようにオムニバスも悪くありませんが、やっぱり一つのカップルをじっくり掘り下げて書かれた本の方が読み応えがあって良いなぁ、と思います。