京山あつき 『KISS ME テニスボーイ』
- 作者: 京山あつき
- 出版社/メーカー: 徳間書店(Chara)
- 発売日: 2014/12/19
- メディア: Kindle版
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現在ウィンブルドン真っ最中ですね。、実は今も、NHKでマリア・シャラポワの試合の放映を見ながらこのエントリを書きあげました。
というわけで今日はテニスプレーヤー同士のBL漫画の感想記事です。
寺門要はオーストラリアへのテニス留学中、ダニエル・ロスという金髪のジュニア選手に出会い一目惚れします。5年後、17歳で再会。その後、2人は各地のテニスの試合で何度も顔を合わせることとなります。そんな中で、2人の間にはなぜか奇妙な賭けが成立します。要がダニエルにテニスの試合で勝ったらダニエルの体に触って良い、というもの。ところが全米ジュニアチャンピオンのダニエルの実力に要はなかなか及びません。何度も迫られるうちにまんざらでもなくなってきたダニエルは、やがて勝負の結果に関わらず要と抱き合いたいと思うようになるのですが、要は頑なに勝ってからという約束を守ろうとします。
なぜそれほど要はダニエルにコート上で勝つことにこだわるのか?という謎に向けて、ストーリーは進んでいきます。謎が解けるのは最終話。要の純情ともいえる単純な動機が理由でした。
それにしても、京山あつきさんの漫画は初めて読みましたが、なんだか不思議な持ち味の作家さんなんだなぁ~としみじみ感じました。シュールなシーンが多いんですよ。
攻めがバキバキと枝が折れるのをものともせず真顔で茂みの中に入って受けへ突進していくところを読んで(普通は茂みを迂回して行くでしょう)、「え、なんだこの攻め、なんかヘンだぞ、この人」と奇妙さを感じたのですが、読み進めるに従い攻めのシュールな言動はそれどころじゃないとわかってきました。これほど変人らしい変人、めったに見ません。京山あつきさんはよくこんなキャラを造形したなぁ。凄い。
ストーリー自体もお互いに好きあっているのに奇妙な賭けのせいで体の関係に進めない、というのはシュールですよね。だって誰に強制されたわけでもなく本人たちが自発的にやっていることですから。傍から見ていると無駄だしバカバカしいのだけれども、このバカバカしくて奇妙で変態チックな状況を真面目に取り組んで関係を深めていく二人を、いつのまにか読者は応援してしまうのです。
正直萌えるかというと萌えなかったけれど、不思議とそのユニークさが印象的なBL漫画でした。
余談。カバーの裏表紙に、
「'07のウィンブルドン男子シングルス決勝がすごくおもしろかった」
という作家さんのコメントが載っていたので、思わず調べてしまいました。フェデラーとナダルの3時間45分に渡る激闘の年だったようですね。私も見てみたかったな。