sorachinoのブログ

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凪良ゆう 『まばたきを三回』

まばたきを三回 (ショコラ文庫)

まばたきを三回 (ショコラ文庫)

舞台は素朴な焼き物が特産の山間の田舎町。地元の陶器職人×幼少期に東京から村へ療養に来ていた同級生のお話です。恋人であった受けの訃報を告げられ絶望と孤独の日々を過ごしていた攻めの前に、幽霊になったという受けが現れます。受けの姿を見れるのは攻めだけ、けれど姿は見えても体に触れることはできません。そんな中でも、幽霊とはいえ受けが傍にいてくれる喜びを噛みしめる攻めですが、事態は思いもかけない方向へ……。

小説『時代屋の女房』や児童書の『ふーことユーレイ』シリーズが好きだったので、いつか幽霊もののBLを読んでみたいなと思っていました。この『まばたきを三回』を書店で見つけた時は迷わず購入しましたよ。本作は幽霊がモチーフになっている作品ということもあり、死というものの意外なほどの身近さを突き付けていますが、ちゃんとハッピーエンドです。初稿の終盤にさしかかったとき東日本大震災が起きて読後に希望やあたたかいものが残る話にしたいと思ったという作家さんの思いがあとがきに書いてありました。本当に、切なめなテイストでありつつ暖かみのあるラストでした。最後のどんでん返しはなんとなく予定調和というか予想がついていましたが、攻めも自分で自覚していない秘密があった、という中盤の展開は予想外で面白かったです。

それにしても、この作品は受けも攻めも一途でピュアですね。直球に愛の言葉を突き付けあうし、お互いだけしか目に入ってない幸福な恋人たちです。家族も彼らを祝福していますし、幸せになってほしいな。
小学生の攻めが受けからの貰い物のマカロンを食べるシーンがあるんですが、その描写が印象に残っています。お洒落なお菓子なんて田舎のスーパーでは売っていませんから、マカロンの存在を知らなかった攻めは、そのカラフルな色合いに毒のようだと内心思うんですね。しかし、受けから貰ったものだからと齧り付くと、甘酸っぱいクリームが美味しいのです。「それ、黄色いからシトロンのマカロン」と教えてくれた受けの台詞はまるで魔法の呪文のように聞こえ、受けの笑顔を見た攻めの胸の中には甘酸っぱさが広がり、そして心の中で何度もシトロンノマカロンと反芻します。シトロンノマカロン。シトロンノマカロン。シトロンノマカロン。この幼い恋がどんどん積もっていく描写はとっても可愛らしかったなぁ。

お菓子と言えば、本文冒頭にケーク・サレが出てきて懐かしい気持ちになりました。そういえば一時期、ケーク・サレってブームでしたよね。書店の料理本コーナーには関連本がたくさん並んでいたしネットでもいろんなサイトで特集されていました。私もケーク・サレとはどんなものなのか食べてみたくて、目白にある専門店へわざわざ買いに行ったことがあります。懐かしいな。

ところで、攻めが祖父と会話するときに「でぇれぇ」という言葉を使っていたんですが、ネットで検索かけたところ、これは岡山県の方言で「とても」を意味するんだとか。作中で舞台についてははっきり明言されていませんが、やっぱり岡山をモデルにしているんでしょうかね。



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