sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説、アニメ、ドラマ等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。不定期更新。

藤たまき 『私小説』

初版発行1998年ということですから、15年以上も前の作品です。絵柄やあとがきのノリなんかにも古さは感じますが、藤さんらしいテイストはたっぷり盛り込まれていました。『アタ』や『銀のバッチ』『約束』なんかでもそうでしたが、この作家さんは三角関係を描いていても、あまりドロドロしておらず、ラストも爽やかに着地しますね。当て馬にあたるキャラが魅力的で単なる当て馬に終わっていないのもいつも通り。

この作品のタイトルは『私小説』というだけあって、主人公の紅絹(もみ)が日記を書いたり、紅絹の同級生である息吹や佐原というキャラが手紙を書いたりなど、登場人物が私的な文章を書くシーンがよく出てきます。それ絡みで、私は一つとても好きな場面がありまして、それは幼少期、友達の紅絹が本を読んだり文を書いたりばかりしていてちっとも自分と遊んでくれないと泣く息吹に、彼らの先生が優しく言うシーンです。

「そういう子もいるんだよ。一見つまらなく見えるかもしれないけど……。文字を書くということは、ある時劇的な驚きを生む時がある。思ったことを――書くというのは……形にならないココロの中を目に見える形に変えるんだから……」
「おどろき?」
「そう。心の中に隠された何かを発見する、整理する。それが――紅絹くんには何にも勝る遊びだったんだね」

良い教師だなぁ。書くことの快楽ってまさしくそういうことですよね。
そして、個人的な文を読むことの喜びというものもある。あとがきで、その人らしい文章を書く人もいるけれど、人によってはまるで知らない人が書いたかのような文章を書くこともあるのが面白い、文で見るその人の世界は会って話をするその人の世界とは異なっていて、人の側面というものを感じさせる瞬間だ、と藤さんは語っています。あー、それ凄いわかるなぁ。今はメールやLINEでやり取りすることも増えましたから、電話だけしか気軽なコミュニケーションツールが無い一昔前とは違って、友人知人の個人的な文章を見る機会って増えていますよね。凄く厳めしい人が絵文字満載の可愛いメールとか送ってくるとそのギャップにおぉwってなっちゃいます。

この漫画は、文章という世界で垣間見えた人の側面に感動した、という藤さんの経験が描かせたお話だそうです。



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