夜光花 『ミステリー作家串田寥生の考察』
- 作者: 夜光 花,高階 佑
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2011/05/25
- メディア: 文庫
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ミステリ作家×担当編集。普段は首都圏住まいの二人ですが、一緒に取材で訪れた瀬戸内海の小さな離島で物語は進んでいきます。島への船は高松港から一日一便のみ、人口は200人未満、過疎化が進み観光客もめったに訪れないその女凪島では、ちょうど7年ぶりに神鎮祭が行われようとしていました。実はその島の旧家出身である受けは、隠されてきた島の惨い因習と家族や攻めの秘密を知ることになります。殺人事件は起こるわ、島ぐるみの因習は陰惨だわ、しかも発生した事件は揉み消され犯人に刑事罰は課されないわ、事態の根本的な問題解決は結局されないままだわ、ミステリ面に関しては後味も悪くなかなかダークなお話でした。
一方、恋愛面では両思いになってハッピーエンドで終わっています。数年間仕事相手の攻めに片思いしていた受けが報われてホッとしましたよ。小説家の攻めは、汚部屋住人だったり極度の面倒臭がり屋だったりと駄目なところもあるけれど、受けが世話焼き体質なのできっと割れ鍋に綴じ蓋カップルになるのでしょう。
それにしても、攻めはなんとも捉えどころのない変わり者でした。うーん、魅力的だけど不思議な人だ。エピローグで受けも気にしてましたが、受けの身内のせいで亡くなった兄のことは本当に割り切れるんだろうか。被害者家族と加害者家族であることを承知の上で、それでもなお攻め本人は受けを運命の人だと思っているそうですが。カミングアウトした受けへの対応等を見るに、妙に懐が深いところがあるんだろうな。受けが常識人な分、攻めのキャラクターの飄々としたところや言動の面白さが印象的でした。
高階佑さんのイラストが良かったです。受けも攻めも端整な美形で眼福です。