sorachinoのブログ

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吟鳥子 『いずれの御時にか』 壱

いづれの御時にか (1) (ウィングス・コミックス)

いづれの御時にか (1) (ウィングス・コミックス)

タイトルにかの有名な源氏物語の冒頭の一節を冠していることからわかるように、舞台は平安時代の京。今上帝に復讐をするために、政争に敗れ出家した弟宮は蟄居の身ながら配下に様々な暗殺や謀略を命じていた。主人公はそんな配下の一人、角髪姿で毒針による暗殺術を得意とする少年、小鬼丸。ある日、小鬼丸は宮中での暗殺現場から逃亡する過程で、梅壺女御の妹の透子姫に姿を見られてしまう。目撃者の口をふさぐべきかと迷う彼だが、なぜかこの高貴な姫に心惹かれて……、という話。

主人公とその仲間たちが、子供ながら非常に大人びていて胆のすわったキャラクターばかりでした。あっさり何人も殺すわ、顔色も変えずに淡々と殺した遺体を担いで現場を離れるわ、末恐ろしいな。彼らを手足として使う弟宮もふてぶてしくて随分と毒のある人物です。

むしろ復讐の対象として狙われている今上帝の方が儚げですね。病弱なのに虚勢を張っているところとか、愛する梅壺の女御を守ってやれない無力さに苦悩したりだとか、実質的な権力者である義父に弱みを見せまいと気を使ったり、帝位にある息苦しさを抱えていたりという胸中が描かれているので、その真面目な性格もあいまってついつい今上帝に肩入れしたくなりました。

あと、今上帝とその正妻である弘徽殿の女御の組み合わせも萌えたな。プライドが高くて素直になれない弘徽殿の女御の今上帝へ向ける愛が切なくて泣かせる。彼女の視点から語られる6話が良かったなぁ。14歳で入内したときの回想シーンで、11歳の青白い少年の帝を見て

こんな少年が私のお婿さまだと言うの……?

と不満に思った弘徽殿の女御が、帝に優しく語りかけられて

恥ずかしそうにお笑いになるのは悪くないわ
物語の殿方のように私を奪ったりはして下さらないでしょうけれど、こういう控えめな求愛も悪くないわ

とすぐに思い直すのがなんか可愛らしかった。
この帝夫婦もそうだし、小鬼丸と透子姫、幼少時の弟宮とその叔母の内親王もそうですが、恋愛面では少年と年上の女性という組み合わせが多いのがこの漫画の特徴ですね。やっぱり光源氏藤壺の女御になぞらえてるんでしょうか。

次巻の2巻で完結している作品ですが、登場人物が多いのでそれぞれどんな結末をたどるのか気になります。