sorachinoのブログ

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青井秋 『ステラリウム』

ステラリウム (Canna Comics)

夜空に輝く星の製造工場で働く男性が、零した涙から生まれた少年を育てるうちに心を通わせ――――というファンタジックな設定に惹かれて買ってみました。

この表題作は、切なさと透き通るような雰囲気が印象的でした。登場人物の落ち着いた性格もあるでしょうし、星をモチーフにしているだけあって静謐な夜の場面がたくさんあったせいもあるかと思います。そして何より、背景効果の表現がひたすら繊細で丁寧だったからでもあります。正直なところ、キャラクターにあまり人間味や親しみを感じなかったし、ストーリー展開も意外性が無かったので萌えはありませんでしたが、往年の少女漫画を思わせる繊細で独特な作風は今のBL界では結構珍しいので、貴重な持ち味の作家さんだと思いました。

青井秋さんの本は今回初めて読んだのですが、昔の長野まゆみさんと似た感性を持ってそうな方だなー、という印象を受けました。でも、長野さんより毒はないので読みやすいです。


ちなみに、個人的には、表題作の『ステラリウム』よりも同時収録の短編『真空庭園』の方が好みでした。透という体から植物が生えてしまう青年が主人公という、これまた実にファンタジックな設定です。

透は、自分の体に生えた植物を摘み取り、はるかという少年に渡します。はるかは透の葉を食べ、自分の呼気を透に与えます。二人はそうしないと生きていけないが、はるかの将来を懸念した透は二人の関係を変えようとし……、というストーリー。少年期のはるかの積極的な感じが可愛かったです。