鳩かなこ 『東京白波夜話 暁闇に咲う』
東景白波夜話 暁闇に咲う (講談社X文庫ホワイトハート(BL))
- 作者: 鳩かなこ,今市子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/03/05
- メディア: 文庫
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
鳩かなこさんというと溢れる大正浪漫と濃密で独特な文章というのをイメージしますが、本作でもそれは同様でした。世界観からしっとりとしたレトロな和というものが大好きなんだろうな、というのが読んでいるとビンビン伝わってきます。ちなみに、私にとっては、ストーリー展開はそれほどでもないけれど、設定にはかなり心惹かれる作品が多い作家さんでもあります。
今回、ツボだったのは攻めの藤吉。狐顔の短髪、凄腕の掏り、わりと口数は少なめ、江戸っ子弁、というキャラクターなのですが、この攻めが受けの世話をこれでもかと焼きまくるのです。出会ったばかりの幼い頃はつきっきりで体の弱い受けの看病を行い、受けが成長して充分一人でこなせるようになってからも、お風呂で背中を流してあげたり、お茶を淹れてあげたり、着替えを手伝ってあげたり……とにかく攻めの言動の中心は常に受けがいます。この辺の攻めの世話焼きっぷりが読んでいて楽しかった。ちなみにこの人、
「一度拾ったのなら一緒に死ぬ覚悟せえ俺にはあるぜ」
「俺だったら羽を切って檻に入れて絶対に外に出さねェ。手の届くところでは勝手も許すが、俺の腕の外には出したかねェな」
などと屋台でお蕎麦食べるという実に日常的な動作をしつつ、こんなことを真顔で受けに言っちゃう男であります。受けを守るためなら自分の育ての親でさえ警察に売るし、どんだけ執着攻めなのかと。
続きもので、2人が別離に見舞われるなかなかどえらいところで終わっております。次巻が気になりますね。