岡田屋鉄蔵 『極楽長屋』
- 作者: 岡田屋鉄蔵
- 出版社/メーカー: マッグガーデン
- 発売日: 2013/02/14
- メディア: コミック
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江戸時代。まともな長屋に入居できない人々が集まる極楽長屋の住人たちの姿を描いた時代物漫画です。
1話は、父親が窃盗犯として逮捕されたことがきっかけで仕事と住居を失い極楽長屋にたどり着いた若い大工の物語。
2話は、火事で浅草の芝居小屋を焼き出され極楽長屋に舞い戻ることになった女形と、その贔屓の人望厚い同心の物語。1話も2話もほろりとくる人情話でした。
BL好きながら、一応男同士のカップルが出来上がりつつ終わる2話よりも恋愛成分のない1話の方が印象深かったです。なんといっても、描写の容赦なさが凄いので。2話で公明正大な同心の熊谷が理不尽に家族や親しい人を殺されていくのも実に惨くて読んでて辛いのですが、私は1話の若い大工・義一が受けるリンチのシーンが怖くて仕方なかったです。もちろん義一に暴行する男はまともな人ではないのですが、そんな奴に犯罪加害者の家族になった途端正義面して罵倒され殴られる、その悔しさと惨めさといったら……。
「盗人の倅が偉そうにすんな!! 世間様に申し訳ないって面してろってンだよ!!」
「良く聞けよ 俺ぁな 見てるからな…っ」
「ずっと見張ってるからな!! 手前が怪しい動きしたらっ すぐとっ捕まえて親父と一緒に島に送ってやらあ!!」
「いいか! ずっと見張ってるからな!!」
背筋がぞっとするような凄まじい呪詛の言葉だわこれ……。
若干18歳で職と家を奪われ一人ぼっちになってしまった義一。そんな彼を、極楽長屋のお隣の夫婦が何くれとなく世話してあげていて救われました。義一には長屋の住人たちに可愛がられつつ幸せになってほしいわ。
それにしても、岡田屋さんって本当にオヤジキャラの味のある表情を描かれますね。1話の主人公である義一の父親が、島流しの刑になって江戸を離れようとするとき息子に会えたときの泣き笑いが本当にいい顔です。
義一のお隣でいろいろと世話を焼いてくれる強面の六助や、義一に極楽長屋を紹介した長屋の大家、極楽長屋の大家、いい人っぽさがにじみ出てる中年男性の同心熊谷、などみんな実に味わい深い。おじさんキャラがしっかりしてると人情話に厚みが出てきますね。
背景も含め、絵は抜群の安定感があり、とても時代物にあっていると思いました。