潮見知佳 『KEY JACK 1〜7』
- 作者: 潮見知佳
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 1999/10
- メディア: コミック
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↑の画像は1巻だけ表示していますが、7巻まで読了済です。
・主人公:御厨秋
不思議な力でありとあるゆる鍵を開けられる泥棒の青年が主人公の連作短編漫画でした。
面白かったところ
善と悪を兼ね備え
不法侵入や窃盗をためらいなく行う犯罪者が主人公なので、本作は一種のダークヒーローものと言えるでしょう。
もちろん、単なる極悪人というだけなら読んでいても反感をおぼえるだけですが、主人公やその協力者たちは時に人助け行為をしたり義賊的な働きをすることもあり、読者が感情移入するのは難しくありません。
また、主人公は1000万の報酬を出せない依頼人の依頼は基本冷酷にはねつけるのですが、依頼料を支払えない依頼人のケースでは主人公なりに理屈をつけて実質タダ働きをすることもあったり、他から徴収することでその依頼人から取り立てないこともあります。この辺りはなんとなく手塚治虫の『ブラックジャック』を思い出しますよね。
悪と善、冷酷さと慈悲、どちらも兼ね備えた存在だからこそ本作の主人公は魅力的なのでしょう。
連作の中で、大切な者を守ろうとするために主人公と対決するキャラクターが出てくる話がいくつかありますが、私は特にそういうのが面白かったです。殺されかけている妹を救うため自分の命をかけてまで主人公を捕えようとする凄腕刑事が出てくる2巻の第4話、孫の命を守るために老人が主人公から宝物を守り抜こうとする2巻の第5話などです
。そういうキャラは主人公のクールな悪人の面を嫌というほど味わい苦悩するので、読んでいる私は「え、これどうなっちゃうの、主人公ったらなんでこんな酷いことしちゃうの」とハラハラしますし、その分、最後に主人公がヒーロー的な振る舞いをし彼らを救ったときのカタルシスは大きくなりました。
人情話
また、ストーリーをホロリとするような人情話的な落としどころに持っていく話が多く、読後感の良さも本作の魅力だと思います。特に悪徳商人とその妻の夫婦愛が仄見える1巻の第3話や、高飛車な大女優とそのマネージャーの絆を描く3巻の第9話は好きでした。
その他
というわけで、面白い作品なのですが、個人的に不満な面もないわけではありません。私は、主人公のキザすぎる言動とか、気恥ずかしい決め台詞を毎回言うとか、リンのバブルっぽいファッションとか、昭和にもほどがある!とツッコみたくてたまらなかったし、主人公の幼馴染の悪徳高利貸しや主人公の協力者でニューハーフの情報屋がクローズアップされてる話はなんとなく同人的なノリが強い気がしてあまり入り込めなかったりしました。
そうは言っても、7巻まで読ませたのはやはりこの作品の惹きつける力だよなぁと思います。
まとめ
まずありとあらゆる鍵を開けてしまえる超能力という設定も面白いし、1話1話きちんとオチをつけてくれるので、とても読みやすかったです。