sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説、アニメ、ドラマ等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。不定期更新。

オノ・ナツメ 『リストランテ・パラディーゾ』

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

リストランテ・パラディーゾ (f×COMICS)

主人公:ニコレッタ


レストランを舞台にした映画やドラマって、大好きです。美味しい食べ物が登場するので視覚的にも楽しく、さらに職場の濃い人間関係が繰り広げられる様子が描かれているのもいい。三谷幸喜さん脚本のドラマ『王様のレストラン』とか大好きだったなぁ。

というわけで、イタリアはローマのレストランを舞台に、そこで働く人々の恋模様を描いているオノ・ナツメさんの少女漫画『リストランテ・パラディーゾ』を読了しました。ちなみにBL的要素は無し。恋愛描写はありますが、登場するのは男女のカップルです。

年配男性の色気

この作品の何にびっくり仰天したって、とにかく年配男性の色気をド直球で描いていたということに尽きます。ここまで率直に赤裸々にあからさまに、老眼鏡の老紳士へのパッションと萌えを表明した作品というのは前代未聞なのではないでしょうか。

例えば、主人公の若い女性ニコレッタの恋のお相手は、給仕長のクラウディオです。彼は老眼鏡をかけた物腰穏やかな優しい老紳士。ちょっと老けてるというレベルではなく、ホントに正真正銘の老人として描かれているのです。目じりや口元に皺があるし、実年齢もニコレッタの母親よりも上ですし。なのに、驚くほどに色っぽいんですよ……!! ニコレッタに迫られて「困ります…」とクラウディオがか弱く抵抗する様には、何だこの色気は!と言いたくなりました。確かに21歳の若い女の子が血迷ってもおかしくないほどの魅力を説得力を持って描かれています。

結局ラストでも2人の仲は決まらないわけですが、できればくっついて欲しいなぁ。素敵な恋人同士になりそうですから。もちろんクラウディオが孫ほどの年齢のニコレッタの求愛にそうそう応えるわけにもいかないという事情も分かるんですけどね。

この漫画を読んでいて、私は池波正太郎さんの時代小説『剣客商売』を思い出しました。『剣客商売』の主人公の小兵衛とその妻おはるは、仲睦まじい夫婦だけれど年の差は40もあるんです。ニコレッタ&クラウディオと良い勝負ですね。小兵衛が中年男性の理想や願望を反映して若い女の子を嫁に迎えている一方、おそらく若い女性であると思われる著者オノ・ナツメさんが『リストランテ・パラディーゾ』のように若い女性と老人男性との恋愛を描いているというのは面白いと思います。

しかし、まぁ、この漫画に出てくる色気のある魅力的な老紳士たちはファンタジーだよなぁと読んでいるとしみじみ思います。決して地に足の着いた老人ではありませんし、介護問題とかのリアルでキツイ年の差カップルの抱える問題点とかはほとんど出てこず、読者の理想や願望を反映した美化されまくった老紳士ですね。もちろん、どんな創作物だって登場人物の美化はある程度行われるものですし、この手の漫画で現実的でミもフタもない老人は需要は無いので当然ですが。私もクラウディオに萌えましたしね。

イタリアのお洒落なリストランテという舞台設定は、日本人読者からはちょっと非日常を感じさせる舞台設定であり、そういう場でファンタジックな老紳士たちはますます輝いて見えるのでした。


ジジの隠された恋心

本作には、クラウディオの他にも素敵な老眼鏡紳士は多数登場します。
その中の一人、ソムリエのジジの恋心も切なくて印象的でした。

ジジは、リストランテのオーナーの異父兄であり、従兄弟でもあります。つまり、ジジの父親とオーナーの父親は兄弟で同じ女性を愛した、ということですね。

運命の皮肉と言うべきか、歴史は繰り返すと言うべきか。ジジもオーナーも、兄弟でありながら同じ女性を愛します。

ジジはその気持ちを面には出していませんが、弟のオーナーはジジの気持ちを知っていそうだなと思いました。ニコレッタの出生に勘づいていた件でも示されているように、ジジと同じく、人のことを良く見ている聡い人物のようですから。三角関係であると自覚しながらも父親達のようにいがみ合う訳ではなく、長年職場を同じくし兄弟仲は良い、と。うーん、なんだかいがみ合うよりキツイ状況な気もしますが、この兄弟はこれで良いのでしょう。


その他

  • 絵は独特なタッチで、お洒落な漫画、という印象。ただしクセのある絵なので合わない人は合わないかもしれません。
  • この作品、アニメで見てみたいなーなどと考えました。以前少しだけ『ベルヴィル・ランデブー』というフランスのアニメ映画を見たことがあるんですが、あんな感じで映像化したらオノ・ナツメさんの絵柄を保持出来て結構いいアニメになるんじゃないかなと思います。などと考えていたら、2009年に本当にアニメ化されていたんですね。残念ながらそのアニメを見たことは無いんですが、いやーびっくりです。
  • 出会ってから数回しか会ってないのに押し倒すとはニコレッタも大胆というか無謀というか無礼というか。私は、女性が男性に積極的に迫る図というのは大好きですが、部屋に連れ込んでいきなり押し倒そうとするなんてそりゃ駄目でしょ〜!クラウディオよりもニコレッタの方が身体的に強い可能性もありますしね。

まとめ

老紳士萌え、眼鏡萌えの一冊でした。