sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説等の読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。どちらかと言うと新刊より古い作品に言及することが多いかも。ネタバレ多数。コメント大歓迎です。

湊ようこ 『氷雪王の求婚 〜春にとけゆくものの名は〜』

氷雪王の求婚 ?春にとけゆくものの名は? (コバルト文庫)

氷雪王の求婚 ?春にとけゆくものの名は? (コバルト文庫)

  • ヒロイン:アイリス・ティティス・ローレリアス(16)
  • ヒーロー:エドリック・クサビエ・フォン・シュテツヴァイエン(26)

小中学生のころはよく買っていたコバルト文庫を、先日久々に買いました。何年ぶりだろう。書店で何気なく手に取ったとき著者紹介の欄にあった

故・氷室冴子先生の作品が大好きでした。

という一文にホロリときまして、こんなこと書く作家さんの作品はどんなお話なのかなと気になったのです。私も氷室さんの『なんて素敵にジャパネスク!』とか『ざ・ちぇんじ』、『銀の海 金の大地』などが本当に大好きでしたよー。何度も読み返したものです。氷室さんが亡くなられてからもう3年も経つなんて寂しすぎるなぁ。湊ようこさんは年齢的に考えるとちょうど氷室さんの活動期にリアルタイムで新刊を読んでいたのでしょうね。


というわけで購入した本書なのですが、これ良かったですよ。
ちなみに今回はいつにもましてネタバレしまっくっている感想なので、以下、未読の方はご注意ください。



面白かったところ、好きなところ

歴史ものを意識した構成と悲恋もの

この作品はドイツ、オーストリアあたりを彷彿とさせるヨーロッパ風の架空の帝国を舞台にしています。ヒーローが若き皇帝、彼と政略結婚した皇后が主人公のヒロインということもあってか、歴史ものを意識した構成になっています。ヒロインが眠る墓所の発掘調査から新事実が発見されたというのが物語の導入だったり、後世の人々が主人公カップルの時代を記述しているかのような趣向の地の文だったり、登場人物たちの日記・書簡・回想録・自伝などの文言がところどころ挿入されていたり。
歴史ものを意識した作品として物語世界の奥行きを出そうという工夫がそこかしこにしてあって、丁寧に作りこんでいるなと感じました。
特に回想録等の挿入は、なかなか心憎い演出です。中でも、お忍びで貧民街を訪れた皇帝夫妻が街の子供たちと雪遊びをするエピソードに関連した自伝は良かったです。

僕の祖父は大層な大ホラ吹きで、  略  パイプを片手にしょっちゅうホラを吹いていた。  略  一つだけ、地味で現実的なホラがあった。皇帝と戦って勝ったという話だ。よくよく聞いてみると、剣での一騎打ちなどではなく雪合戦なのだけれど、それだって信じられない。

名もない脇役である貧民街の子供が、成長して子供を持って、やがて年老いたとき、孫に幼い頃出会った有名人の姿を語り継いだのかと思うと、なんとなく歴史もの特有のロマンを感じさせるいい話だなぁ。と、微笑ましく思っていたら、次の衝撃的な文章とのギャップにやられました。

祖父も相手が誰だかまったくわからずに遊んでいたそうだ。じゃあいつ気がついたのかと尋ねると「彼が処刑台に上がった時」と紫煙をくゆらせながら答えた。

このように、回想録等の挿入部分にはがっつり伏線が張ってあり、読者は主人公カップルの悲劇的な行く末をかなり早い段階から予見しつつ読み進めていくことになります。
でも、私、こういう死にネタを予想させるのって、どうせ作品世界中の史料ではそうなっているけれど実は死を免れて2人睦まじく市井で暮らしたというラストになるんじゃないか、恋愛もの少女小説だし、とタカをくくって読んでいたんですよね。正史ではこうだけど、真実はそうじゃなくて〜、というのは歴史もの作品やそれに準じた作品を読む楽しみの一つですし。
ところがどっこい、マジで悲恋ものだったとは!しかもヒーローの死に様が惨くて、ここまで悲恋に真正面からぶつかる作品とは思っていなかっただけに驚きました。まぁ、確かに主人公カップルの行く末については伏線の通りだったわけですが、それでもラストで明かされる歴史的新事実は、正史では拾いきれない彼らの一筋の希望を探り出していて救いがあります。ハッピーエンドではなかったけれど、切なさとともに魅力を感じた作品でした。



その他

  • 皇帝夫妻の目指す政治の在り方が同じだと気づいたとき、彼らはヒロインが皇后ではなく側近であったなら、と願うのですが、恋愛ものでこれを言うのもなんだけれどホントその通りだよと思いました。ヒーローは奥さんよりも先に信頼できる有能な側近を確保すべき!彼は君主として失敗してしまう人物なんですよね。民のために国をよくしようという気概や理想は抱いているけれど、それを実行するための実務家な側近や信頼の置ける部下の姿が宮廷にはほとんど登場していないし、地道に根回ししたり協力者を募ったりというのはあまりしていない様子だし。帝国内外の有力な家柄から娶った正妃6人を追い出したり亡くしたりして、貴族からの反発が強いのは自業自得な面もあるよなー。もうちょいヒーローが宮廷からの人望を勝ち得る言動をしていて、賢く立ち回ることができていれば結果も違っていたんだろうなぁと残念。まぁ、でもそこが若き皇帝の青臭く不器用なところでもあったのかもしれませんが。
  • 超どうでもいい話ですが、「湊ようこ」さんというペンネームを見ていると、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ〜」という歌が頭から離れません。
  • 主人公の兄シオン子爵と、主人公の幼馴染のカルスがいいキャラだった。

まとめ

構成がしっかりしていて、手堅くまとめた良作品だと思います。最初から最後まで一気に読み終えました。悲恋だけれど、救いのあるお話なので読後感は悪くはありませんでした。小さな希望とロマンを感じさせるラストの余韻は心地よかったです。久々に楽しんで読めた少女小説でした。


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