中村明日美子 『ダブルミンツ』
- 作者: 中村明日美子
- 出版社/メーカー: 茜新社
- 発売日: 2009/07/24
- メディア: コミック
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裏社会、犯罪者、そういったテーマの作品は題材が題材なので、暴力描写あり、殺人描写あり、バッドエンドあり、転落人生あり、死にネタあり、となかなか不穏な展開が多いわけですが、それだけに味わい深いお話が多いのも事実です。『ダブルミンツ』もそんな漫画でした。
組織から捨て駒にされるような底辺のチンピラと、その高校時代の同級生の物語。
爽やかな『同級生』『卒業生』の作者と同一人物が描いたとは思えないほど、この『ダブルミンツ』はダーティな作品です。暴力もあるし殺人も描かれます。女の子に対する受けのやり口は読んでてムカつくくらい下劣で酷いしね。
一話一話重ねていくごとに、2人が破滅へと堕ちていくのが切ない。人を殺して、日本に居られなくなって、中国の片隅で汚い仕事をして食い扶持を稼ぎ、いつ死に直面するかわからない暮らしをするまでに至る。それでも2人は一緒に居られるのだから、これ以外の道は無かったのでしょうが。
作中でプラトンの愛の起源がモチーフとして使われているのを見て、映画『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ (Hedwig and the Angry Inch) 』を思い出しました。『ヘドウィグ』のラストシーンでは、ありのままの自分の姿で一人歩み去っていく主人公が描かれていたけれど、この『ダブルミンツ』ではどこまでも片割れとともに2人で堕ちていくのがなんとなく対照的に思えたり。『ダブルミンツ』はまさしくやおいなんだなあ。
中村明日美子さんの漫画っていつ見てもその描線の美しさに惚れ惚れします。キレイだー。