sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説等の読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。どちらかと言うと新刊より古い作品に言及することが多いかも。ネタバレ多数。コメント大歓迎です。

高遠琉加 『観賞用愛人』

イラスト:北畠あけ乃、SHYNOVELS 2006年9月

  • 受け:加藤瑛
  • 攻め:音無悠一

観賞用愛人 (SHYノベルス168)

観賞用愛人 (SHYノベルス168)


初めて読んだ高遠琉加さんの本でした。タイトルも良く表紙も綺麗、あらすじも好みで、「俺は鎖でピアノに繋がれている。まるで犬のように。」という帯の文にワクワクしながら購入を決意。

大学助教授×大学生。とはいえ同じ大学に在籍しているわけではなく、出会いは遊び人の受けが常連になってるバーでした。

私大勤務の研究者で、理学部植物学科植物生理学講座助教授の攻めは、クールで無表情、無口な人ですが、研究の話になるとよく喋る、というキャラクターです。趣味は、自宅に大量に置いてある観葉植物の世話。受け曰く「緑の城の、青い目をした孤独な王様」という人物。

攻めが受けに「動物か、君は」と言う場面があるのですが、受けが動物なら攻めは一見静謐で植物的な男という印象で、対照的なキャラクターのカップルでした。


《萌えたところ、好きなところ》

【見つめ続けること】

攻めが雪山の別荘という陸の孤島に受けを閉じ込めて、手を出すわけでもなくただひたすら見つめ続ける、という本作。
その中で音無の身の上と気持ちが明らかになっていくわけですが、本書のキーワードは、タイトルに『観賞用』とついてるだけあってこの攻めの淡々とした受けへの視線です。

逃げられないように受けを自分の傍に拘束して、その上でたっぷりと眼差す。受けは攻めの視線から逃げられず、監禁されることへの動揺や憤り、食事をしたり眠っているところなど、一挙手一挙足の全てをじっくりと攻めに眺められてしまう。しかもその受けを眼差す視線というのが、性欲でギラギラした下品なものではなくて、無機質でひんやりとしているんですよね(少なくとも表面上は)。

これ、すっごい不気味だし、恐ろしいだろうな。

けれども、なんかこの攻め、素敵に変態っぽいというか、フェティシズムに溢れていて良かったです。榎田尤利さんの『犬ほど素敵な商売はない』の攻め・轡田など、私はこういう真剣にまじめに変態的なことをする攻めが好きなんだなぁ。もっと“観察”するシーンがあったら嬉しかっかも。
エピローグで無防備に眠る瑛の寝顔を見つめて幸福を感じる音無が良かった。

それに『観賞用愛人』というタイトルは、決して瑛だけを指しているのではないというのは上手いなぁと思いました。あとがきによれば、作者さんはこのタイトルでもう一つストーリーを思いついたとのこと。ぜひそれ書いて欲しいです。

【お風呂のシーン】

それと瑛が音無に自分の髪や体を洗わせるシーンも、ツボでしました。音無は、丁寧に隅々まで磨き上げるように洗います。お風呂でイチャついたり攻めが受けの体を洗うというシチュエーションは個人的にかなり好き。

誘い受け

本作は過去と現在が交互に表れる構成となっています。読み進めていく内に判明したのは、監禁される以前は面白いことに受けの方が積極的にアプローチ(?)していたということ。出会いの時に興味を持って近付くのは瑛の方だし、音無を待ち伏せしてみたり、キスを仕掛けたり、音無の部屋に押しかけて入り浸るようになったり、からかったり何度も挑発したりとアグレッシブに関係性を深めようと働きかけています。

その様子は、音無曰くまるで

おやつをもらいに来る野良猫のように寛ぎ始め、たまに遊べと爪を出してちょっかいをかけてくる

感じとのこと。瑛は結構誘い受け要素がありまして、際どい挑発を音無相手に繰り返しているのを読むのは楽しかったなー。

ちょっと甘ったれな猫っぽい瑛は、恋人同士になっても「なー音無さん、もっと俺のことかまえよなー」みたいに攻めにちょっかいかけそうだ。猫系甘えんぼ受けって、可愛い。彼の友人達が言っているように、確かにこの子は年上の綺麗なお兄さんやお姉さんに可愛がられているのが似合いそう。

【ゾクゾクする】

特に印象に残った場面としては音無が共犯者の行成に手伝わせて瑛の服を鋏で切り裂き、瑛を去勢することもできるぞと脅す場面があります。そういえば剛しいらさんの『チャンピオンを犬が噛む』でも攻めが受けの去勢をほのめかすような場面があったなぁ。当然どちらの作品も実行はしていませんので、肉体的に痛い描写は無理なヘタレの私としても読めましたが。それどころか正直に言いますと、むしろちょっと萌えた…。エロスと暴力性は切り離せないものなのでしょうか。



《その他》

  • 自分自身には利益が無いのに相手の利益のために共犯者になるって、なかなか濃い絆だと思う。行成と音無の間で恋愛感情が生まれる可能性は無かったんだろうか、などとつい考えてしまいました。
  • そういえば音無はさすが植物的な男というべきか、性行為について自分はあんまり向いていないようだとか、自分は誰とも性行為はしないんだとか自ら語っていて、初体験以降相手が男だろうが女だろうが経験は無いと明かしています。このようにセクシュアルな欲望が薄いというのは、BLの攻めとしては珍しい人だな、なんかセックスに対してのこだわりも薄そうだし瑛相手じゃなかったら受けもあっさりこなしそうだなぁ、と新鮮なキャラクター性に嬉しく思いながら読んでたのですが。やっぱり最後はBLの攻めとして相応しく(?)、独占欲を見せ付ける台詞を吐きながら受けを激しく攻めていましたね。私はずっと淡白なまんまでも良かったんだけど。
  • 北畠あけ乃さんの表紙は、静謐な雰囲気が作品にあってるし薄緑の色使いも綺麗。2人ともちゃんと服を着てるため店頭でも買いやすくて有り難いです。

《まとめ》

 植物的な音無のキャラクターのせいなのか高遠さんの抑えた文体が影響しているのかわかりませんが、全体的に静かで淡々としている落ち着いた印象を受けるお話でした。それなりに事件も起こっていますが、あんまり派手な感じがしないし、泥臭さも皆無。良い意味で綺麗で静かで上品なお話でした。この雰囲気、私は好きでした。



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説読書感想へ
にほんブログ村