高遠琉加 『溺れる戀』
- 作者: 高遠琉加,今市子
- 出版社/メーカー: 大洋図書
- 発売日: 2007/12/26
- メディア: 新書
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主人公の一人称は、キャラクターの嫌味のないおっとりとした人柄を反映していて、どこか上品でした。描写も丁寧なので読みやすかったです。一等船室と三等船室の格差や、波の高い夜の甲板での告白、寄港地新嘉坡(シンガポール)での出港時間までに船に戻るべきか迷う展開など、船旅ならではの要素がたくさんあったのも嬉しかった。全体的にしっとりと落ち着いた雰囲気が漂っていました。
ただ、上流階級の紳士淑女が集う晩餐や舞踏会、翡翠とエメラルドの首飾り盗難事件、船火事による脱出劇などが描かれているわりには、少し地味な印象を受けました。特に船火事はあっさりしていたので、もっとドラマチックに、読んでいてハラハラドキドキするよう描かれていたほうが盛り上がったのでは、と思わないでもないような……。後半も駆け足気味な感じがします。
今市子さんの表紙のカラーイラストの美しさはさすがの一言。