sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説、アニメ、ドラマ等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。不定期更新。

草間さかえ 『はつこいの死霊』

東京漫画社 2004年11月20日初版発行

  • 受け:菅谷裕一
  • 攻め:三峰智(15→25)


はつこいの死霊 (マーブルコミックス)

はつこいの死霊 (マーブルコミックス)


 第一話は中学生が隣の部屋に住む大学生に初恋をするお話で、二話以降はその2人が十年後に再会をした姿を描いています。成長した彼らは、中学生が埋蔵文化センター勤務の職員(攻め)に、大学生が建設会社勤めのリーマン(受け)になっていました。
 評判が良いようなので購入してみたらお気に入り作品になりました。個人的な好みでいえば、二話目以降の方が話が動き出して面白かったように感じたなぁ。


【独特な力強いタッチの絵】

 草間さかえさんの絵柄は、線が太くて紙面の濃淡がはっきりしているせいか、力強い絵という印象を受けます。少女マンガによくあるようなキラキラした大きい目の可愛らしい絵柄を見慣れていた私の目には新鮮に見えました。独特な魅力があると思います。
 
 特に手描きの背景はとても味があって良かったです。第一話で二人が住んでいたアパートやその周辺の住宅地は妙に生活感が溢れていたし、成長したトモが住んでいるラブホの裏に建つ建物の部屋とか何ともいえない魅きつけられるものがあります。142ページの工事現場の低い曇天、51〜52ページあたりの蕎麦屋の格子窓が作り出す陰影、時折登場する微妙に屈曲されてデフォルメされた風景なども良かった。ホントどれも妙に生活臭や郷愁を感じさせられる背景で、物語世界のイメージを豊かにしていたと思います。良い意味で、土臭さを感じる。こういうしっかり背景を手描きで描き込んでくれる作家さんがBL業界にもいるというのは嬉しいなー。ちなみに10ページのポテトチップスの反り返り具合がなんか美味しそうだった!

 それと攻めがバランスの良い男性的な体つきだったのもグッジョブ!顎や首ががっちり系で、骨格がしっかりしていそうな感じがするんですよね。文科系まっしぐらっぽいキャラだけど、皮膚の下の太い頑強な骨とそこそこついてる筋肉が想像できそうだ。


【なんかムーディ】

 一番萌えたシーンはベッドで裕一が乳首に触られて痛がるところでした。これまでBLを読んでいて乳首に萌えたことは特に無かったのですが、ここで開眼しました。134ページの4コマ目や136ページの1コマ目の裕一は常になく無防備に見えて良い。この場面に限らず、草間さんのエロはなんだか萌えます。蕎麦屋の二階でいつ人が来るかわからないという緊迫感もよく伝わってくるし、鍋いっぱいに満たしたたっぷりの業務用ローションをトモが裕一に使っているシーンもエロい。

 あと、10年前の浮気を責められてると勘違いしている裕一が駅で座り込んでしまうのを攻めが立たせるシーンが印象に残ってます。トモの裕一への優しさを感じます。この本は、全体的なストーリーよりもこういった個々のさりげないエピソードやシチュエーションがいちいちムーディでツボにきたなぁ。

【お似合いの受けと攻め】

 攻めのトモは行動力もあって手回しもよく器も大きそうで頼りになりそうだし、少しヘタレが入ってるように見える裕一にはお似合いの恋人だなと思う。長年自分の心の奥底にしまわれていたものをぶつけられる相手、自分の心の深いところまで触ろうとしてくれる相手って、なんだかんだ言っても手放せないものだろうなー、と裕一を見ていて感じました。その後同棲してるっぽいし、このカップルはうまくいきそうだな。

 2人の続編読みたい、でも2004年出版の本だし綺麗に終ってるので無理だろうかと考えていたところ、草間さかえさんの公式HPでトモが裕一に膝枕をしてあげているイラストを見ることが出来て嬉しかったです。ナチュラルに仲良しなところに萌えました…!


【読者サービス】

 ブックカバーを外した裏表紙に、おまけ漫画が描かれています。こういう読者サービスは嬉しいなぁ。ちょっと得した気分になりました。



《その他》

  • しかし裕一は、いくらなんでも流されすぎな気がするぞ。
  • 対してトモは飄々としているわりに意外と押しが強いですね。いや、押しが強いなんて次元の話でもないか。相手が流されやすくていつの間にか丸め込まれて恋人になった裕一だったから大事には至らなかったようなものの、いきなり取引をもちかけて相手が承諾する間もなく縛って押し倒すって、しかも“バイならこれくらい受け入れろよ”的な考えは、どうなんだ。いや、乳首責めには萌えたけどさ。
  • “はつこいの死霊”という設定は、作中で攻めも言ってますが、正直なところ実に胡散臭い。けれどその胡散臭ささえも作品の雰囲気にしっくりくる気がします。そういえば「この先あんたが被る全ての不幸の原因の俺の事を忘れるな」というトモの台詞、やっぱりこれは自分とのキスを思い出さないならば、せめて憎まれることによって記憶に残りたいという気持ちなのか。蕎麦屋での無理矢理の行為もこういう感情が根底にあったからなのか?と考えると、結構トモって可愛いところあるじゃん。
  • 草間さんの絵はとても魅力的な面も大きい一方で、結構クセのある絵なので読む人によって好みが分かれるかもしれません。ちなみにコマとコマの間が空いていない漫画は矢沢あいさん以来久しぶりに見ました。珍しいですよね。

《まとめ》

年下攻め、眼鏡受け萌えな方、リーマン受け萌えな方、再会モノ好きな方などにお勧めです。



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