sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。2018年は月一更新を目指し、毎月15日0時更新予定。

藤たまき 『遊覧船』

遊覧船 (ディアプラス・コミックス)

遊覧船 (ディアプラス・コミックス)

藤たまきさんにはまっています。

正直なところ 以前はこの方の絵に苦手意識を持っていたのですが、一年ほど前ひょんなことから『フラッグ』を購入してみたらとても面白かったんですよ。心配していた絵についても、杞憂だったことが判明しました。ここ数年の藤さんの絵は結構変化していて、その変化後の絵にはとても萌えたことから、なんで早くこの人の漫画をもっと読まなかったんだ〜!と後悔しました。

すぐに『密告』と『私小説』を手に入れ、続いて『不思議ポット』、『アタ』、さらにこの『遊覧船』も買い揃えました。どれも面白かったです。

あらすじ

本作『遊覧船』の舞台は箱根です。商船高専を休学中の高校生である受け・日和は、旅館を営む実家の手伝いをしたり、船着場の売店でアルバイトをしたりしている毎日。

そんな日々の中、東京から来て箱根に滞在している小説家の攻め・間宮と出会うことになるのですが、この攻めは何かと受けにお金を渡そうとする人でした。

遊覧船乗り場の売店でバイトをする日和は、物書きの間宮のことが気になっていた。間宮は何故か大変気前がよく、日和にことあるごとに高額な駄賃をくれる。それはふたりが初めて寝た日もそうだった。日和は激怒するが、実は間宮はお金でした愛を得る術を知らない人で……。表題シリーズ四遍を収録。間宮と日和のプレシャス・デイズ。

  • 受け:東西日和
  • 攻め:間宮悠

漂う優しさと繊細さ


この『遊覧船』、乙女心をくすぐられるというか、なんだか凄く胸がキュンキュンする作品でした。漂う雰囲気は優しく、台詞もセンシティブでどこか切なくて、日和も間宮も可愛いよー!ギャグシーンも微笑ましい。私、この漫画とても好きです……!

表紙は、日和の柔らかい表情がとてもいいなぁ。目の色も髪の色も肌の色もとても繊細な色使いで、優しくふんわりとした感じが漂っています。白い大型の遊覧船も良い感じ。あと、タイトルや作者名などを群青色っぽい青で統一したデザインも綺麗だ。

旅情をかき立てられる箱根という舞台や、船や航路というモチーフも叙情的で良かった藤です。


異なる二人がどうやって寄り添っていくのか

 この作品の一番面白さは、途方も無く乖離している価値観を持つ二人が、どうすればお互いを摺り合わせ寄り添っていけるのか、どうすれば末永く繋がっていくことができるのかを暗中模索する過程を丁寧に描いているところだと思います。

 受けも攻めも、間違いなくお互いのことが好きで肉体関係もある恋人同士なのだけれど、どうしても価値観の合わない部分があって、それ故に関係が上手くいかなくなって悩んでいます。

 恋愛やパートナーシップというものはカップルとして成立したらそこで終わりなのではないよってことですね。関係性の永続という求めるものは同じなのに、それを築いていく方法が異なる二人をじっくり描いていて、じわじわと面白さが滲み出すような本だなぁと思いました。

 攻めの間宮さんは『千と○尋の神隠し』に登場するカ○ナシのように、多額の金銭や高価なもので求愛をしようとする人で、日和曰く「本当は少し悲しい愛すべき金の亡者」。

 バブリーな攻めというのはBLにはよく登場するものだけれど、たいてい湯水のようにお金を使う攻めの姿は攻めの力を誇示していてどこか華々しい印象を受けるものです。ところが、本作の間宮が湯水のようにお金を使うと、なんだか物悲しさが作中で漂います。それがとっても切ない。

 金銭に関して間宮の価値観に異を唱える日和だけれど、一方で自分が買ったものを間宮が大いに喜んで身に着けているところを見て嬉しく思う経験もします。間宮の価値観の一端を自ら体験した後で、日和は対話を通して間宮との関係を深めていこうとするのです。

 たとえ少しずつであっても、ちゃんと登場人物が成長していくのが気持ち良いです。「金の亡者」間宮さんも、日和との交際を通して、新しい人との繋がり方を学んでいく。日和も間宮に歩み寄るし、間宮という大事な人が出来て将来を見据えて復学をしようとする。2人が寄り添うことによって、それぞれが成長し前進し始める。だからでしょうか、この作品はとても読後感が爽やかでした。


日和のさりげない台詞にノックアウト

 藤さんの漫画に登場する少年は、ときどき物凄く精神的に大人びているように見える瞬間があります。例えば本書『遊覧船』ならば、日和が宿泊先の宿の女将さんに

「古い建物ですね でも… どこもピカピカで 行き届いて心地の良い… きっと心のこもったご経営の賜物ですね」

と言って宿を褒めるシーンがあります。

 私、実は日和くんの魅力を一番感じたのはこのシーンでした。こんな風に、素直にその人自身の言葉で褒めることが出来たら相手も嬉しいだろうなー。
 

その他

  • BLで養子縁組をするカップルというのは幾組か見たことがありましたが、制度の整っている海外で同性婚を希望する、という案は初めて読みました。少しびっくりしたけど、新しい展開でなんだか感慨深いです。時代の波ですねぇ。それに間宮さんならマジで結婚式を実現してくれそう。
  • 口絵にはドドン!と日和のお尻があるので、購入時に本屋でカバーをかけて貰いたい方はご注意ください。結構インパクトのあるお尻なので…!
  • この本に登場する日和の母親や旅行先の宿屋の女将さん、また『アタ』や『密告』など他の藤さんの漫画に登場する主人公の母親である中年女性は、可愛い系のおばさんが多いですね。シャープな印象は全然無くてあったかいお母さんという感じ。丸顔で小柄で、髪がフワフワしていて、目がつぶらでどこか子供らしい容姿をしている。皺さえなければ、日和のお母さんは日和より子供らしく見えるかも。こういうお母さんキャラクターって和む。
  • ところで気になることが一つ。間宮さんは一体どんなジャンルの小説を書いていたんだろう??純文?ミステリ?ホラー?SF?金銭感覚がいささかズレている彼が書く作品にはセレブな人たちが登場したりするのだろうか?

まとめ

ラブラブ好きとしても年の差カップル好きとしても美味しい大満足の一冊でした。お勧めです。



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