sorachinoのブログ

BLやラノベ、少女漫画、ロマンス小説、ミステリ小説、アニメ、ドラマ等のジャンルごった煮読書感想ブログ。お気に入り作品には★タグをつけています。ネタバレ多数、ご注意ください。コメント大歓迎です。不定期更新。

リンダ・ハワード 『ふたりだけの荒野』

ふたりだけの荒野 (ヴィレッジブックス)

南北戦争終結から数年後という19世紀アメリカを舞台にしたロマンス小説。
面白かったです。実は、初読は図書館で借りたことがきっかけだったんですが、読み進むうち手元に置きたくなってその後本屋さんで買いました。

かつて南軍の精鋭兵士だったマッケイは、四年前のさる事件が原因でお尋ね者に成り果てていた。そしてある日、ついに腕きき賞金稼ぎトラハーンに見つかり、負傷する。マッケイは傷ついた体を癒すため、近くの町の美しい女医アニーの家に忍び込んだ。トラハーンの執念深い追跡を逃れつつ治療してもらうためには、アニーを脅して苛酷な逃亡の旅に同行させる以外なかった……。

ヒーロー:ラファティ・マッケイ(レイフ)(34)
ヒロイン:アニス・セオドア・パーカー(アニー)(29)

緊迫感溢れる山小屋生活

個人的にツボだったのは、負傷した賞金首のレイフが、医者のアニーを誘拐して二人だけで山奥の小屋に潜伏する前半部分です。銃で脅しながら山小屋の住環境をアニーに整えさせたり治療させたりするレイフですが、同時にアニーを寒冷な気候や野生動物から庇護する役割も担います。アニーも人質という弱者でありながら、医療という面では患者のレイフの生殺与奪の全権を握る立場にあり、この辺の二人の力関係のスリリングな揺らぎが独特の緊張感を与えていて面白かったです。
誘拐犯と人質がラブロマンスに発展するというのはご都合主義的な展開ではありますが、この緊張感の漂う山小屋生活での濃密さの中、説得力を持って二人の関係性が描かれていたように思います。

その他

  • ロマンス小説に出てくる度々登場する「南部の男」に付随するイメージについて。アメリカの読者はこの「南部の男」という属性に対して男らしさやセクシーさというイメージを共有しているのでしょうが、米国史の知識が乏しい私にはいまいちピンと来ないんですよねぇ。もっと知識があれば、本作のヒーローであるレイフの「南部の男」らしさを描かれる部分を読んで更に鮮やかなイメージを思い浮かべることができたのだろうなと思うと若干損をした気分に……笑
  • 本作を読んで米国史の知識不足を痛感するのは、「南部の男」だけではなく、終盤の物語の佳境に入るにつれて実在の歴史的人物の名前がどんどん出てくるからでもあるんですよ。翻訳者が巻末で色々と解説してくれていますが、この辺も詳しく知ってたらもっと物語を楽しめたかもと思いました。
  • スピリチュアル要素について。ヒロインには癒しの手という不思議な力があるのですが、この超能力は無くても話は成立するんじゃないかなー?という気がします。ぶっちゃけ無い方が良かったような……。なぜなら、彼女が医師として頑張っているからです。患者を救っていたのが、本人の無自覚の不思議なヒーリング能力ではなく、彼女自身の医療技術の研鑽の賜物だった方が救われるなぁと思いまして。実際、あの時代に女性が一人暮らしで縁もゆかりもない炭鉱街で医師をするって本当に大変だったのでしょうから。
  • それにしてもレイフのタフさが凄まじい。

まとめ

アウトサイダーなヒーローと頑固な女医のラブロマンス、楽しめました。

basso 『amato amaro』

amato amaro (EDGE COMIX)

イタリア政治家シリーズ第2弾。前巻の主役カップルは、今回脇役に回っています。
相変わらず表紙が美しい。このマットなグリーン、綺麗です。


表題作はボディガード×経済学者のお話。気だるげな眼といい、あごひげといい、襟足の立った髪型といい、さらにスーツを着こなす長身痩躯といい、攻めのアルマンドの容姿が非常にセクシーでシビれました。個人的に、bassoさんの描いた中で一番色気を感じたキャラかもしれません。ファッションモデルをやってほしいくらい。寡黙で無駄口を叩かないところも好みです。

それにしてもこの作品の受けはとんでもない天邪鬼ですね。攻めへの口説き文句は、挑発にしても結構酷いような……(笑)。こんなこと言われたら普通の人は心証最悪になると思うんだけど、これで攻めを落とせると踏んでいる受けは天邪鬼じゃなかったら相当な自信家なのではないでしょうか。まぁ実際、最終的に攻めを落としているのはお見事ですが。


この短編漫画集の中で一番好きだったのは、『differenza(ディッフェレンツァ)』でした。兄であるパオロの結婚を祝うため、双子の弟であるマウロは、ゲイのパートナーを連れて緑豊かな田舎町へと帰郷します。まともな道を歩み父のお気に入りのパオロと、父の覚えがめでたくないマウロ。父とマウロの関係が悪化したのは、マウロが男を家に連れ込んでいるのを父が叱責したからなのですが、実はこれは父による誤解で、家に男を連れ込んだのはパオロだったのでした。パオロも、マウロも、その誤解を解かないまま大人になったのです。

この兄弟、本当に切ないわ~。パオロは、ありのままの自分を家族に知らせることなくずっと「決まったルートを歩いて」生きていくんでしょうね。

マウロは一緒に歩むパートナーがいるけれども、それでも父の愛を得られないのは辛いよなぁ。人生って恋愛だけじゃないですから、愛するパートナーがいれば他の人には理解されなくても構わない、というものでもないでしょうし。

短くも、切なくほろ苦いお話でとても印象に残りました。



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basso 『クマとインテリ』

クマとインテリ (EDGE COMIX)

イタリア政治家シリーズ第1弾。

抑えた色調の中にソファの赤が映える表紙、格好良すぎですよね? お洒落度ハンパない……! このインパクトにそそられて、つい表紙買いした人も多かったのではないでしょうか。


表題作『クマとインテリ』は、カメラマン×インテリ政治家のお話でした。

受けのファウストは、前首相かつ現党総裁という、これでもか!と言わんばかりの豪華な肩書を持っています。首相を務めた経験があるくらいですから年齢もかなりいっているわけで、しかも妻子持ちですし、そんな初老男性を受けさせるとはこれまたもの凄いところに萌えを発見するなぁ、と初めてこの本を読んだときは作者さんの発想に度肝を抜かれました。

しかも、攻めは26歳という若さで、親子ほどの超年の差カップルなのですよ。凄いな。

最初はこのお爺ちゃんな受けに萌えるのは難しいかもなぁと心配しつつ読んでいたんですが、読み進めるうち、バカンスから帰ってきた後に攻めの名刺を眺めて嬉しそうにしているあたりから、受けの可愛いらしさがわかってきました。ブルーノの正体に一喜一憂する恋するファウストは、妙なヘタレっぽさとも相まって確かに可愛いんですよ。

ところで、攻めのブルーノはクマ系とのことですが、あんまりクマっぽく見えないような……。せっかく『クマとインテリ』というタイトルが素晴らしくキャッチ―なので、イタリア政治家シリーズ第3弾で登場するウーゴくらいブルーノががっしりした大柄でも良かったかなーと思いました。



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縞田理理 『モンスターズ・イン・パラダイス』 全3巻

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (1) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (2) (ウィングス文庫)

モンスターズ・イン・パラダイス (2) (ウィングス文庫)

  • 主人公:ジョエル・H・ホープ(20)
  • 相棒:カート・V・ウェステンラ

人間とモンスター―“神話的人類”の共存する大都会、アイオニア連邦ブルームフィールド市。田舎から出てきたばかりの新米捜査官ジョエルは、着任早々“神話的人類”専門の部署に配属される。実は“神話的人類”恐怖症のジョエル。だが、コンビを組むことになったカートは、意地悪でひねくれ者で、しかも吸血鬼だった…!!

主人公ジョエル・H・ホープの名前のHとはヒューマンを表していて、相棒のカート・V・ウェステンラのVとはヴァンピールのVだそうです。

吸血鬼小説は以前から好きでして、書店や図書館で見かけるとついチェックしてしまいます。一般書では菊地秀行の『蒼き影のリリス』シリーズやシャーレイン・ハリスの『満月と血とキスと』なんかが好きですが、この本も吸血鬼が登場する本のお気に入りの一つとなりました。古い作品ですが、面白かったです。

モンスターが闊歩する世界観

このお話は世界観がとてもファンタジックで魅力的です。

吸血鬼や狼人間、マーメイド、セイレーン、半人半馬のセントール、ミノタウロススフィンクスなどの神話的人類が、市民権を得て人間と日常生活をともにする隣人、という設定になっています。

何気なくポクポクと道を歩いるセントールとすれ違ったり、食事の席でヴァンピールと隣り合ったり、スフィンクスとエレベーターに一緒に乗ったり、という生活を想像すると凄くワクワクするなぁ。いや、でも、蛇頭は実際会ったら怖いでしょうが…。

私のお気に入りの神話的人類は、セントールのトリストラムと、スフィンクスのレオニダスです。どちらも上半身が人間で下半身が四足というキャラクター。この本のおかげでそういう半人半獣萌えに開眼しましたよ。

明確なテーマ

作中世界において、神話的人類たちは差別の対象となるマイノリティとして描かれています。ジョエルは彼らと交流を持つ中でその現状に触れ、やがて差別を無くしていこうと決意するのですが、この差別の問題は作品全体を貫くテーマとして打ち出されていました。

もちろんそういう問題を扱っているだけにちょっと説教臭さが漂っている気がしないでもないですが、ジュブナイルらしい清爽さがあります。

物語序盤のジョエルは、お人よしで性格も良くて正義感や良識もあるけれど、神話的人類への差別的な感情や同性愛カップルへの偏見も捨てきれていない一般人として描かれています。

例えば、雄のスフィンクスと成人男性の人間がキスしている場面を見て、男(雄)同士であることを奇異に感じ、さらに人間と神話的人類という異種族が睦みあっていることへの嫌悪を感じています。

こういう小市民的な部分のあるキャラが成長していく姿には好感がもてますね。

成長と言えば、ミリシャという吸血鬼の少女も、全3巻を通して大きく成長したキャラでした。1巻を読んでいる時点では、一介のメイドがああいう風に強くなっていくキャラだとは思っていなかったので、嬉しい驚きでした。

バディもの

純朴な若者とひねくれ者な美形の吸血鬼が事件解決を通してバディとしてお互いに信頼を育みあっていく過程も良いんですよ。これぞバディもの、という感じで。

ちなみにブロマンス要素ありと言えども、ウィングス文庫なので主人公と相棒(両方男)はカップルではなくあくまでもコンビというレベルでとどまっています。ジョエルはミリシャという女性の恋人候補も出来ますしね。

作品全体通して直接的なやおい描写はあまりありませんが、しいて言うならレオニダスとその主人エルモーライがキスしてたことくらいでしょうか。この二人は、挿絵画家の山田睦月さんによる3巻の巻末イラストで、凄くラブラブな姿を見せていてちょっと笑いました。エルモ、良かったね。

まとめ

重すぎず軽すぎず、爽やかなお話でした。

キヅナツキ 『リンクス』

4組のカップルのお話が入った短編BL漫画集。

  • ラジオパーソナリティ×カフェ店長
  • カフェオーナー×ヤクザの秘書兼護衛
  • 彫金師×サラリーマン
  • ヤクザ(若頭)×組長の息子

各話は同一世界を舞台にしています。同じマンションのお隣さん同士、上司と部下、店員と常連客、高校時代の先輩後輩などと、登場人物たちは互いに面識があるという設定。


4組の中では、私は彫金師×サラリーマンが一番好きでした。出会いの日から一日ごとに近づいていく二人の距離感が良いです。猫と戯れつつ、一緒にごはんを食べる心地よい関係が自然でした。

あ、ちなみにこの二人は受け攻め逆かもしれないという示唆がおまけの
4コマ漫画や人物紹介にありましたが、私は長身でガタイの良い彫金師・亀田攻めの方がイメージしやすいなー。

亀田の方から告白していましたが、いくら気が合うとはいえヘテロ相手に恋愛関係まで持ち込んだのはお見事。告白に至るまでの詳細は描かれていないので、サラリーマン荻川のSっぷりも含めてそこらへんも読んでみたかったですね。

それにしても、亀田は4組目のカップルの受け・忍のセキュリティ兼監視もやっているそうですが、やっぱり裏社会に片足突っ込んでいるということなのかな? お洒落かつ繊細そうな表紙のイラストを裏切って、この本に出てくるキャラクターは亀田といい、忍とその同居人の佐渡といい、2組目のカップルの攻め・弥彦といい、裏社会の人間が結構多くてびっくりでした。


キャラ単体だとカフェ店長の新発田も可愛くて良かったです。ちょっとフレンドリー過ぎて(馴れ馴れしいとも言う)ウザいキャラですが、人懐っこさや明るくて凄くラブリーでして。31歳の立派な成人男性なのに愛くるしい人って凄いです。


4組目は高校時代から10年以上付き合っていて半同棲状態にある二人がメイン。

彼らはとある交通死亡事故の遺族と、事故のもう一方の生き残った当事者という関係でもあるのです。そのせいで受けは攻めに対して贖罪意識を持ち、攻めも受けの贖罪意識に付け込んで縛り付けてしまっているという罪悪感を持っています。

攻めの亡兄は故人でありながら強く存在感を放っており、ラスト、攻めの夢の中で登場し遺された者たちを祝福するシーンは切なくもエモーショナルな仕上がりになっていました。

それにしても、ドビュッシーの月の光を何気なく鼻歌で歌うとは、忍はお洒落さんですね~。この曲、結構鼻歌で歌うの難易度高いと思うんですが。


ところでこの本の難点を言いますと、とにかくキャラが識別しずらいのが読者泣かせでした。まず1組目の受けと、2組目の攻めと、3組目の受け(暫定)が似ているし、1組目の攻めと2組目の受けと3組目の攻め(暫定)も似てるんですよ。初読の時は困惑しまくりで、巻末のプロフィールを読んでやっとキャラを把握できたという感じでした。もうちょっと描き分けがされていれば良かったと思います。


ただ、絵は全体的に非常に綺麗でした。キヅナツキさんの作品は初めて読みましたが、違う単行本も読んでみたくなりました。



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